【4】国重 亜樹奈さん(玄海町地域おこし協力隊・棚田プランナー)
〈自己紹介〉
生まれも育ちも福岡市博多区。
武田鉄矢と同じ中学。ドライブや旅行が趣味で棚田が好き。
町おこしに興味があり、地域おこし協力隊として活動中。
〈国重さんの視点〉
テーマは「生活」「ならでは」「過程」です。
よその人から見たら「なんでこんな所にこんな物が置いてあるの?」と疑問に思うようなものでも、そこの土地の人にとっては「生活」するために必要不可欠なものだったりします。そうした「生活」に目を向けてみると、その土地「ならでは」の光景が見えてくるのではないかと思いました。
また、魚や肉、野菜、果物が食卓に出てくるまでの「過程」にも注目してみました。たくさんの人たちが手をかけてくれているおかげで、天災や世界恐慌などがあっても、私たちがスーパーに行けば、いつでも買うことができます。命をいただくまでの「過程」をきちんと理解し、食べ物に感謝して頂かないといけないという気付きを得ることができました。
1枚目>『大量のコンテナ』
普通の人が見たら、なぜこんなところにコンテナがたくさん置いてあるのだろうと思うかもしれません。しかし、それは…。
2枚目>『体重測定』
1枚目のコンテナは、このように水揚げした魚の重量を計測して出荷するためのものでした。
3枚目>『瑞々しき果実』
前日の雨に濡れた、まだ熟していない青いミカン。こうしてミカンは成長していくんだということが分かります。
そして、その下に目を向けてみると…。
4枚目>『マルチを守る瓦』
地面に瓦が並べられていました。どうしてミカン畑に瓦がいっぱい置いてあるのかというと、マルチが飛ばないように押さえる重しとして使うためだということでした。
*「マルチ」とは、作物の株元の土壌表面を覆うプラスチックフィルムなどの農業資材のこと。
マルチ(マルチング)を行うことで、土壌の水分を蒸散を抑える効果等がある。
5枚目>『公園からの景色』
三島公園の高台から見た風景です。私も初めて行ったのですが、玄海町が見渡せて、すごくきれいでした。
こちらが「表の顔」だとすると、実は「裏の顔」が6枚目…。
6枚目>『雲丹苔』
遊歩道の途中にある石の壁に、苔がびっしり付いていました。
黄色っぽくて、海も近いので、「雲丹苔(ウニゴケ)」と勝手に命名してみました。
7枚目>『未開拓地』
高台へ向かう遊歩道を歩いていくと、草がびっちりと生えているところがありました。
歩きづらさはありましたが、ジャングルを分け入っていく感もあって、割と楽しいなと思いました。
人があまり来ないので、なかなか整備もできないのかもしれません。ここも「ならでは」かなと。
8枚目>『塩害を受けるポスト』
何気ない郵便受けですが、よくよく見ると錆びてしまっています。海が近いので、潮風の影響でしょうか。
これも海辺の町「ならでは」だなと思います。
9枚目>『カレンダーの有効活用』
玄海海上温泉「パレア」の中にある直売所で売られていた野菜です。
「里芋」と大きく書かれた紙は、見てみるとカレンダーの裏紙でした。なんとなく、玄海町の方のおおらかさや大胆さが垣間見えた1枚です。
10枚目>『親指姫~マコモダケに囲まれて~』
マコモダケを食べたことはありましたが、実際に栽培されているところは初めて見ました。
葉っぱがすごく大きくて、この写真だけをぱっと見たら、人間がまるで親指姫のような小人みたいに感じるんじゃないかなと。それで、こんなタイトルを付けてみました。
マコモダケがこんな風に大きく育つことも驚きでしたし、これから特産品となって、玄海町ならではの風景になっていくのかなとも感じました。
11枚目>『排水路は続くよどこまでも』
先ほどのマコモダケの田んぼの方にまで、ずーっと続いている長い水路。
あんまり見ない光景だったので、面白いな、「ならでは」だなと思いました。
12枚目>『生後3日』
畜産業の現場で見た、生まれたばかりの牛です。
牛自体を見ることもほぼほぼ無いので、生後3日でこんな立派な牛になるのかという驚きもありましたし、こうした光景を見られるのも、佐賀牛がたくさんいる玄海町ならではだと思いました。
13枚目>『玉ねぎの髪の部分』
玉ねぎ畑で撮った1枚です。
普段は土の下の、球になっている部分しか見ていないので、こんな風に土の上に緑色の葉っぱが出ているんだなぁと、生育の過程を見ることができて面白いと思いました。
14枚目>『等間隔』
農家さんが元々は建設業をされていたこともあり、自分で工夫して、マルチにきれいな穴を開ける道具を作られたそうです。
等間隔に開けられた穴を見ると、几帳面な性格の方なのかもしれない…等々、いろいろ想像できて楽しかったです。
〈国重さんの感想〉
視点を変えることで、普段の生活や写真を撮る中では考えないことや新たな発見、気付きを見つけることができました。
美しい風景を撮ったり、おいしいものを食べたりする時に、その裏側まで考えることはあまり無いですし、想像することも難しい。
ですが今回、生産者さんの現場を見せてもらうことで、「命をいただく」という大切なことを改めて考える機会となりました。
視点採集の写真を通して、多くの方にも、当たり前にあるようなものの裏側について考えてみてもらえたらなと思います。
〈石川の講評〉
視点については、1つに絞った方が分かりやすくて良かったかなと思いました。
今後、みなさんが情報発信していく際も、いろんな視点を混ぜるよりは、ある程度「今回はこのテーマ」と決めた方が伝わりやすいと思いますので、これから少し意識して撮ってみてください。
写真については、例えば6枚目の『雲丹苔』のように、独自の視点でオリジナルの名前が付けられた写真、すごく楽しいですね。それも「海の近くだからウニを連想した」という、きちんとした説明があるからこそ、こちらも「なるほど!」という納得感が得られます。普通の風景写真よりも、その場所に対して興味を持ってもらえるのではないでしょうか。
ネーミングの面白さでいえば、『親指姫~マコモダケに囲まれて~』も、確かにそのように見えてしまう可愛らしさがありますね。また、ちゃんとそう見えるよう、寄って撮った構図も良かったと思います。