Issue 2021.04

Issue|『波佐見ポートレイト』波佐見に “新しい風” を吹き込む、楽しみな面々。

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2021.3.31

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美のり窯 民泊体験記(波佐見町)

クリエイティブツアー|波佐見ポートレイト

長崎県の波佐見町にある「美のり窯」。
こちらは波佐見焼の生地屋さんであり、個人作家として焼き物の工房も営まれています。
さらに、陶芸体験ができる民泊まで!

美のり窯の民泊がどんな感じかをお伝えするため、実際に体験をしていただきました。
体験者は、福岡県柳川市でゲストハウス「ほりわり」の運営もしている島田侑季さん。
F_dデザイン塾の第41期の卒業生でもあります。
それでは早速、島田さんの感想をご紹介しましょう。

*「波佐見ポートレイト」の取材のため、エフ・ディの石川とスタッフも同行。

クリエイティブツアー|波佐見ポートレイト

右から島田さん・美のり窯の松﨑康則さんと久美さん・F_dスタッフ

エフ・ディのお二人との待ち合わせは、窯元さんが多く集まる「中尾山」。
陶郷といわれる場所の散策からスタートしました。
「焼き物のまち」を体現している街並みに憧れます。(たくさんの坂道は辛いけど。)
それから、1000年以上も前に創建されたという、由緒ある「金屋神社」に参拝。
珍しい波佐見焼のおみくじを引いて、続いては波佐見の人気スポット「西の原」へ。
monné legui mooks(モンネ・ルギ・ムック)でランチを食べている時、オーナーさんに「これから美のり窯さんに行くんです」と言ったら、「あのお二人なら間違いないですね!」とにっこり。
その顔馴染みの関係を伺える風通しの良さに心も和んで、美のり窯さんへと向かいました。

クリエイティブツアー|波佐見ポートレイト クリエイティブツアー|波佐見ポートレイト

最初に出てきてくださったのはお父さん。坂の多い長崎らしく、玄関前までも坂道になっています。
「後で温泉に行くなら、車の荷物はまだ積んだままで良いよ」と先回りして考えてくださって、一気に安心してしまいました。
早速、お家の中へ。
昔ながらの、腰を掛けられる高さの玄関を上がって、居間に通していただいたら、台所から杖をついたお母さんが。
2年ほど前に、血管の病気で半身が不自由になったのだといいます。
ちょっとびっくりしたけど、ニコニコと明るい笑顔で「いらっしゃい〜」と迎えてくださいました。

まずは、エフ・ディのスタッフがお父さんたちに「波佐見ポートレイト」のインタビュー。
自宅で民泊をやらないかと誘われたことに、不安よりもワクワクがあった話や、今までに宿泊された方々との楽しいエピソードをざっくばらんに話してくださるのを聞いて、ご夫婦の色んなことに対するハードルの低さを感じました。
その若々しさと懐の深さ、そして沢山の経験に裏打ちされた、どっしりと芯のある感じ。
あぁ、だから初対面にもかかわらず、こんなに肩肘張らずにいられる安心感があるんだな〜と納得。
同時に、今の私には出せないものだな、とも(笑)。

家族との喧嘩の話を聞いて、母のことが思い浮かびました。
自分の宿を母に手伝ってもらうことがあるのですが、ちょっと席を外すと、宿泊客に家族のことをペラペラと話し出します(笑)。
気恥ずかしさや苛立ち、「お客さまには失礼のないように」という思いなど、色々な感情が渦巻いて、母と喧嘩することもしばしば。
でも、自分がお客さんになってみると、そのどれもが、ここの味になっているんじゃないかと感じました。
絶対的な「これ!」というルールがないからこそ、楽しいのかもしれない。
はっきりとした答えは出ませんが、ちょっと肩の力が抜けたような気持ちになりました。

クリエイティブツアー|波佐見ポートレイト

お母さんから、町民大運動会で行われる「皿板担ぎリレー」という競技のことを教えてもらいました。
器の生地をのせて運ぶための、2mほどの長い板。この皿板に石膏型をのせてリレーをするんだとか。まさに産地ならでは。
一見、普通の住宅ばかりが並んでいるように見える風景の中にも「焼き物のまち」らしい日常が混ざり込んでいる。土地の歴史を思い知らされた気分です。
焼き物で生きてきた町であり、生活にしっかりと根付いていること。きっと、この地に入り込むことがなければ、実感することも深く考えることもなかったかもしれません。

クリエイティブツアー|波佐見ポートレイト

取材が終わると、いよいよ楽しみにしていた陶芸体験をしに、自宅横の工房へ。
築100年を超えているというギャラリーの奥には、長い工房。絵付けと生地の製作現場を見せていただきました。
その間も、お母さんとずっとおしゃべり。話が尽きません。
あまりに話し過ぎて、お父さんに「早く準備しなさい」と促される始末(笑)。
ロクロ体験と絵付け体験がありましたが、私はお父さんから、ロクロを使って土を成形する方法を教わりました。

まずはお父さんのお手本。
呼吸をするかのごとく自然に、手の中でみるみると形になっていく土。
私に上手くできるかな…と、ちょっと緊張します。
これは食らい付かねばと、素人ながらにお父さんの体と指、肘や肩の動きを観察。
見よう見まねで粘土に触れると、想像していたよりも硬い。
かと思うと、薄くした瞬間ににゅるりと手から抜けていってしまう…難しい…。
お父さんは「そうなるんだよなー」と共感してくれながらも、「指をね、こう立てて…」と、真似しやすいように見せてくれました。

家族のような人間味のある愛情に包まれた、職人さんとしての気持ちや、技術を伝える真摯な言葉。そして何より、お父さん自身がワクワクしながら教えてくださっている感じがして、なんだか嬉しかったです。
気が付いたら、夢中になってロクロと向き合っていました。
最初は見守ってくれていたお母さんとエフ・ディのお二人は、いつの間にか工房にいませんでした(笑)。

ロクロ体験・絵付け体験 各3,000円(民泊の方のみ)

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絵付け体験では、呉須の使い方などをお母さんに教わりました。

陶芸体験を終え、お母さんとお父さんがご飯を作ってくださっている間に、温泉へ。
泉質がとても良いとオススメされた「はさみ温泉 湯治楼」は、駐車場から入口までの散歩路のようなアプローチに、お洒落なピザ屋さんやレストランがあったり、奥にはクレープ屋さんがあったり。他に見たことのない取り組みをされているエリアでした。

ご夫婦が自分たちの畑で育てた新鮮なお野菜も食卓にのぼります。

帰ると、お父さんが大きなヒラメをさばくところ。
仲良しのお友達が手配してくれたんだそう。民泊のお客さまに出すお魚は、信頼できる調達先から。
表には登場しないけれど、この民泊の「チーム感」にほっこり。支え合える人たちがいて、すてきだなと思いました。
包丁を握り、一つ一つ作業を進めるお父さん。取り囲んでじっと注目する4人。なんだかもう一体感がすごいです。
食卓の準備を一緒にして、てんこ盛りになった美味しそうな料理でテーブルがいっぱいに。
夕食を囲んで聞く、家族のこと、趣味のこと、焼き物の話。
生地づくりや絵付けのことなど、お二人にとっては当たり前でも、私には珍しくて面白い話ばかり。
興味深い内容を、聞き逃してしまいそうなくらいに、あまりにもさらっと話す様子がとても印象的でした。
夜も長々と会話は続いて、寝る頃にはなんだか親戚の家に来た感覚で「おやすみなさい」と言っていました。

翌朝、目を覚ますと待っていたのは、フランスパンで作る、自慢のフレンチトースト。
美のり窯の器は和食に合うのはもちろん、洋食を盛り付けてもおしゃれで、これはぜひ真似したいところ。
今日はあたたかいからと、大きなヤマモモの木がある庭を眺められる部屋でいただきます。
とても気持ちの良い朝ごはんでした。
片付けをお手伝いして、帰る前にお土産を購入するためギャラリーへ。
朝食で使われていたキウイ柄の器が気に入り、買って帰りました。和にも洋にも合う器は、自宅でヘビロテ中です。

思い返すと、ご夫婦がなんの壁も感じさせずに迎え入れてくださったので、いつの間にか馴染んでしまっていたな〜と。
「まるで自分の実家のように遊びに来てくれるお客さんがいる」と仰っていた意味を大いに納得した1泊2日でした。

地域の仕事に触れて、一緒に台所に立って、食卓を囲んで…。
瞬間瞬間を楽しんで自由に過ごした時間は、かけがえのないものとなりました。
「ロクロ体験で作った器が焼き上がったら、それを持って柳川へ遊びに行くからね」と言ってくださったお父さんとお母さん。
ここからずっと続けられる関係が始まるんだなと、ワクワクしています。

*2021年2月時点の内容です。
*撮影の時のみマスクを取っていただきました。

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