Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2020.4.12

塾長の「最近どうよ?」

彌永裕子 Yuko Yanaga|デザイン塾24期生 3/3

企画したアーティストレジデンスに参加してくれたファッションデザイナーの日野美穂さんが、広川町の花などからインスピレーションを受けてKibiruで制作した服を、町のおばあちゃんや女の子に着てもらった。地域と外をつなげて編集することで新しいものが生まれ、町の新たな見え方や人の流れができた。

自分たちの“新しい価値観”を2拠点から発信。

──これからのビジョンは?(塾長)

「今後は、広川町と福岡市の2拠点で活動できたら良いなと思っていて。
『彌永裕子』として、この先どうやって暮らしていけるのか、実験中なんです。

地域おこし協力隊で一緒に活動している、千葉から来た現代アートをやっている女の子と『SHOP編集』というアートプロジェクトも始めました。
自分たちなりに地元の素材も人も知れたので、独自に地域を解釈して、そこに表現を乗せて発信や実験をし、人と体感する場をつくる、新しいタイプの「店」というアートプロジェクトで、それも自由で面白いんです。
広川町の気持ちの良い川辺で『川ラジオ』という名の収録をしたり、『いちごを美味しく食べるための装置としてのパフェ』を作る会をしたり。
昨日も本当は、織物業が盛んな山梨県富士吉田市で行われる『ハタオリマチフェスティバル』に参加する予定でした。
広川町で集めたものを自分たちの視点で編集して『広川の土産物』として並べようと思っていたのですが、台風で中止に。
そこで急遽、Kibiruで『出張しない!SHOP編集ショップ』としてイベントを行ったんですけど、なぜか割りと人が来てくれて。
久留米絣の織元さんに協力してもらって、生地をいくつか委託で売ってみたんです。一つ一つの生地を丁寧に見せるように努めて。
そうしたら、絣なんて全く知らないというような人たちでも、ちゃんと大事に見て、買ってくれたんです。
それがすごく嬉しくて。自分たちなりの価値観で面白いと感じたものに興味を持ってもらえたことや、久留米絣の新しい切り口を見せられたことが。

そんな風に、2人で広川に事務所兼ショップ的なものを構えて、それぞれの作品や、自分たちの解釈を加えて面白いと思うものを出せたら良いなと。
さらにそれを、いろいろな地域に持っていったり、逆に他の地域の生地とかを持ち込んだりもできたら面白いなと思っています。

そして福岡では、ファッションデザイナーの友達と一緒に活動する予定です。
服を作ることだけが『ファッション』とは考えていなくて。
今ある洋服や古着なども『素材』として捉えて、時代に合わせてセレクトしたものや、自分たちが作ったものも置いて、新しい服の出会い方ができる場所を作るつもりです。
自分にとって服の役割って、その時に『どのような自分でいたいか』のチューニングみたいなところがあって。
でも、必ずしも新しい洋服を買う必要もないし、借りても良いな、とか。いろんな実験をしてみたいと思っています。
その友達も、古着や昔のシルクのスカーフなどで新しい服を作ったりしているので、そういう感じで自由にファッションの発信ができる場所をやろうと。」

彌永ちゃんの作品。

自分なりの「ファッション」をやってみようと思い、自作のテキスタイルで服の形にした最初の作品。

大学を卒業するくらいの頃、誰でも体験できる織物のパフォーマンスイベントをした時の作品。

『その他の短編ズ』というアーティスト2人に、テキスタイルを染めるところから作った衣装。-2017年-

広川町のガーベラをモチーフに染めて作った服。ファッションデザイナーの日野美穂さんと一緒に制作。-2019年-

デザイナーやアーティストたちと何人かで『装う遊ぶ』というファッションの活動もしている。

広川町の川辺で、即興でコーディネートや装いを作っていき、架空のブランドのルックブックをイメージして撮影。-2018年-

門司港のアートイベントで『装う遊ぶ』を開催した時に作ったフライヤー。

現代アーティストの星野夏来さんと活動している『SHOP編集』の最初のイベント時のフライヤー。

『SHOP編集』のフライヤー。

『出張しない!SHOP編集ショップ』で久留米絣を販売した時のフライヤー。織機の絵も自ら描いた。

ひろかわ新編集で企画したイベントのフライヤー。あわせて小冊子も制作。

ファッションデザイナーがKibiruに滞在して制作した、アーティストレジデンスの時のフライヤー。

久留米大学の学生と一緒にデザインした、八女茶のペットボトルのパッケージ。

イムズの「koyama coffee」のカレンダーのデザイン。

F_dのデザイン塾で制作した「釣れなくても釣りが好き!」がテーマのZINE。

完成したばかりの最新版「釣り」ZINE。-2020年-

デザイン塾で教えているカリキュラムは少しずつ変えている。
その時の受講生のニーズに合わせ、「広告」寄りだったり「制作実習」寄りだったり。
彌永ちゃんの時は、32ページの冊子を作るという内容だった。テーマは自由。
冊子のコンテンツを考え、写真を撮って原稿を書き、InDesignを使ってレイアウトしていく。
彼女は「釣れなくても釣りが好き!」というテーマで冊子を作った。
慣れないInDesignと格闘しながら、立派に一冊を仕上げた。
その中にちりばめられた自由な線画のイラスト。
なんだかレイアウトに閉じ込められているようで、少し窮屈そうな印象だった。

今や彌永ちゃんのデザインは、まるで絵のように自由だ。ルールなんてない(笑)。
もはや僕が教えたことはどこに役立っているんだ?と聞きたくなるくらいだ。
でもいい。実に彼女らしい作品だ。自在な発想がそのままデザインにも現れている。

僕は彼女に緻密なレイアウトの仕方を教えたが、結果的に、彼女の“レイアウトをしないデザイン”を開花させたのかもしれない。

昼飯を食べに入った店では、だだっ広い座敷に通され、僕ら以外に客はいなかった。
おかげでゆっくりと話が聞けて良かった。
福岡で拠点とするスペースは、デザイン塾のすぐ近くにあるらしい。
そこがオープンしたら、ぜひ一緒に何かやろう。
デザイン塾の卒業生と新しいことができるなら、こんなに嬉しいことはない。
実現する日を心待ちにしているよ!

それじゃあ、また近くに来るときは声をかけるよ。元気でね。がんばれー。