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2021.3.31

西山|中尾百花さん

波佐見ポートレイト|西山・中尾百花さん

ものづくりの夢を叶え、器をキャンバスに。

波佐見焼の窯元である「西山」は、150年以上の歴史をもちます。
モットーは、使う人の目線で器をつくること。
伝統に根差した技術力を土台に、働く一人一人の挑戦を大切にし、さまざまな可能性を探ることで新たな価値を創造しています。

直営のギャラリーショップには、日常に溶け込みながら、食卓を楽しく彩ってくれるアイテムがずらり。
お客さまからの声をフィードバックするとともに、使い手により近い目線として、多くの女性スタッフの意見をものづくりに生かしているそうです。

そんな「西山」でデザインを担当しているのが、中尾百花(ももか)さん。2年目の若手社員です。

「もともと、絵を描いたりモノをつくったりすることが好きだったので、それを生かして、ものづくりやデザインができる仕事に就くことが夢でした。」

波佐見高校に進学した時から、陶芸の世界を視野に入れていたという中尾さん。
美術部・デザイン部・陶芸部がある中で、選んだ部活は美術部でした。

「3つの中でずいぶん悩んだのですが、先輩たちが絵を描いているところが格好良くて美術部に入りました。
2年生になったらデザイン部に移ろうと思っていたんですけど、先生に相談すると『絵を描くことは基礎になるから、デッサンをしっかり身に付けた方が良いよ』と言われ、そのまま所属することに。」

在学中は、「第41回九州青年美術公募展」で167点の応募の中から第5席の朝日新聞社賞を受賞した他、長崎県のご当地ナンバープレートの図柄や、波佐見町をPRするための飛行機の機体デザイン、地域の陶磁器関係のイベントポスターに彼女のデザインが採用されるなど、その才能を発揮。

そして、卒業後に就職を希望したのが、インターンシップで訪れた「西山」でした。

「インターンシップでお世話になった時に、会社の雰囲気がすごく良くて。
デザインができる人を探していると聞いたので、ぜひここで働きたいと思いました。
入社してみると、まわりは優しくて親切な方ばかり。上司も話しやすい方で、多くのことを教えてもらっています。」

西山の商品の中で一番好きなのは、デイジーの花がモチーフの「daisy」シリーズ。

「西山の器は色や形が豊富で、いろいろ組み合わせて食卓を楽しくコーディネートできます。
そんな西山のイメージやトーンを大切にしながら、デザインすることを心がけています。

現在は『こんなのをつくってほしい』『こんなアイテムはどうかな?』という意見を受けて、それを取りまとめて提案し、上司にアドバイスをいただいて、ブラッシュアップしていく感じです。まだなかなか採用されませんが(笑)。」

波佐見ポートレイト|西山・中尾百花さん 波佐見ポートレイト|西山・中尾百花さん

西山のデザインには花柄が多いため、植物をモチーフに考えることが多いのだそう。

「器の絵柄として図案化する際、最初はリアルに描いてみるんです。
実物の花を見て、近くにない時はネットで調べて、まずは忠実に。
それから、単純化していったり、そこにまた描き足したりして、デザインに落とし込んでいきます。

私の母がハーブが好きで、自宅でたくさん育てているので、それらを参考にすることも多いですね。」

「図柄をどのように器に配置するかが、すごく難しいんです。
お皿単体で見ると良いけれど、料理を盛ったらいまいち、ということにならないように。
器の形状に合ったデザインを考えることも大事ですね。
ゆくゆくは、お皿の形も含めてデザインできるようになりたいです。」

波佐見ポートレイト|西山・中尾百花さん

デザイン業務の他、朝と夕方には商品の選別作業を行い、現場の手伝いにまわることも。
さまざまなことを経験し、先輩に学びながら、知識を深めている真っ最中です。

「和柄については勉強したことがなかったので、今は週に2回、絵付け教室に通っています。
古典的な花の表現や、筆使い、濃(だみ)のやり方など、伝統工芸士の方から手ほどきを受けているんです。」

絵付けの楽しさも知り、これからやってみたい仕事の幅がどんどん広がっているようでした。

*「濃(だみ)」とは絵付けの技法。素地に線描きされた輪郭の中を、呉須(ごす)を含ませた太いダミ筆で塗り潰していく。筆を指で押さえて呉須の量を調整することで、色の濃淡の表現が可能。

──お仕事のやりがいを教えてください。

「私がデザインしたものが商品や形になった時に、やりがいを感じますね。
実際に商品化されたものがあって、できれば色を反転させた柄もつくってみたいなと思っています。」

波佐見ポートレイト|西山・中尾百花さん 波佐見ポートレイト|西山・中尾百花さん

──今後のビジョンや目標は何ですか?

「まだ知らないことも多いので、現場に入って、いろんなことを吸収していきたいです。
そして、自分が手がけた商品を少しずつ増やしていけたらなと思います。」

──私の波佐見のイチオシ!

「美味しくておしゃれな『Arbre-monde(アルブルモンド)』がおすすめです。
お友達と行ったり、たまに一人で行くこともありますよ。」

波佐見ポートレイト|西山・中尾百花さん

中尾さんと、高校の同級生で同期の武富綾菜さん。

実は、中尾さんが高校生の時に、一度お会いしたことがあります。
飛行機のラッピングデザインの審査員として、エフ・ディも参加。
その時に、彼女から「将来、波佐見町で絵を生かせる仕事がしたい」と聞きました。
夢を叶えた姿を見ることができて、とても嬉しいです。

西山という大きな土壌に蒔かれた、キラキラと光る種のような中尾さん。
「百花」という名の通り、きっと100通りもの美しい花々を器の上に咲かせていくに違いありません。

*2021年2月インタビュー
*撮影の時のみマスクを取っていただきました。

株式会社 西山

長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷1087
TEL/0956-85-3024
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