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2021.3.31

長島牧場 |長島優さん

波佐見ポートレイト|長島牧場・長島優さん

未来を見据え、農業の魅力を体現していく。

波佐見町の北東部に位置する野々川郷は、茶畑や田んぼが広がる自然豊かなところ。
町内ではお茶の産地として知られています。

野々川郷のことを、地元の人は「のんこ」と言うそう。
なんとも可愛らしい響きは、のどかな雰囲気にぴったりです。

そんな「のんこ」でご両親と共に、牛を育て、お米やお茶、アスパラも栽培している長島優(すぐる)さん。
波佐見高校を卒業後、長崎県立農業大学校の畜産学科で学び、地元に戻って就農。
今年で10年目を迎えました。

現在、「長島牧場」では肥育牛80頭・繁殖牛12頭・お米400アール・お茶200アール・アスパラ13アールという規模で経営しています。

子どもの頃から家業を手伝ってきた優さんにとって、この牧場を継ぐのは自然なことだったといいます。

「農業が当たり前の環境で育ってきましたから。
物心がついた時から親とずっと一緒に作業をしているので、やり方も自然と身に付いた感じですね。
農業機械の扱い方も、いつの間にか覚えていました。
田んぼを耕すトラクターとか、稲わらを丸めるロールベーラーとか、牛舎での床替えや堆肥づくりに使うホイールローダーとか…。」

波佐見ポートレイト|長島牧場・長島優さん 波佐見ポートレイト|長島牧場・長島優さん

牛舎には、出荷してお肉になる肥育牛と、仔牛を産ませる繁殖牛がいます。

「大切なのは健康管理。牛は風邪もひくので、早期発見しないといけません。
一頭一頭ちゃんと見てあげることを心掛けています。
生まれたばかりの仔牛はヒーターで暖めてあげているんですよ。」

ここで育てられているのは「長崎和牛」と呼ばれ、佐世保と大阪をメインに出荷。
長崎の県央地域で生産された中でも、特に質の高いものを『長崎和牛PREMIUM(プレミアム)県央』というブランド名で売り出し中なんだとか。

波佐見ポートレイト|長島牧場・長島優さん

実は波佐見は、長崎県内でもアスパラの生産量が多く、特産品としても知られています。

「就農して2年目の時、高齢化で辞められるアスパラ農家さんが近所にいて、農地を荒らさないために引き継いだんです。
もともと両親が行っていたのは肥育牛・お米・お茶で、アスパラの栽培は未経験。
何も知らないところから始めたので、最初は大変でしたね。
一から勉強して、先輩の農家さんなどにいろいろ教わりながらやってきました。

さまざまな人との繋がりがあって、情報交換ができるので助かっています。
みんな親切に『あれが良かったよ』とか教えてくれるし、『これはちょっと悪いかな』なんて失敗談も聞けるので(笑)。同じ轍を踏まずに済むんです。」

これまで、波佐見焼に携わる人たちに取材をした時も、その仲の良さに驚きました。
同業者にも関わらず、ライバルというよりも、お互いに協力して全体で盛り上げていこうと考えている方ばかり。
それは窯業に限らず、農業の現場でも同じようです。

波佐見ポートレイト|長島牧場・長島優さん

長島牧場では、環境にやさしい循環型の農業にも取り組んでいます。

「牛の堆肥を使って、有機栽培を行っています。
そうして育てた牧草や稲わら、収穫時に切り落としたアスパラなどを、牛に食べさせる。
するとまた良い有機肥料ができて…という風に循環しています。」

波佐見ポートレイト|長島牧場・長島優さん

優さんの奥様の綾華さんは、今は外にお勤めに出ていますが、ゆくゆくは一緒に家業をやっていく予定。
休みの日に手伝いをしながら、仕事を覚えているところです。
長島牧場でつくる作物があんまり美味しいので「他のところのものが食べられないくらい」なんだとか。
その味は親戚もとりこにしたようで、おばあさまも「やっぱり長島のものがいいね!」とすっかりリピーターになったそう。

波佐見ポートレイト|長島牧場・長島優さん

──お仕事のやりがいを教えてください。

「牛でも農作物でも、消費者の方に『美味しかったよ』と感想を言ってもらった時に、やってて良かったな~と思いますね。その一言がやりがいです。」

──今後のビジョンや目標は何ですか?

「自分の家が農家じゃなくても、農業をしたいと思う人たちが増えてくれれば良いですね。
ちゃんと収入を得られて、経営的にも安定していないと、農業をしようという気持ちが生まれないと思うので。
自分たちがその指標となれるよう、もっと牛の頭数も増やしていきたいです。」

また、農業の魅力をもっと発信できればと、食育活動にも積極的に参加。
農協と協力して、小学校での田植え体験などを行っているそうです。

生き物に向ける真摯であたたかな眼差しは、農業の未来をも見つめていました。

農業は休みのないお仕事です。
季節によって異なる作業が待っており、牛の餌やりは朝と夕、毎日のこと。

それでも、優さんの働く姿は自然で気負いなく、なんだか楽しそうなのです。
4匹の猫が飼われ、趣味はメダカの飼育と、本当に生き物が好きなんだなぁとしみじみ伝わってきます。

今回、取材をさせていただいた方の中に、優さんの小・中学校の同級生である、敏彩窯の小林巧征さんがいます。
彼は優さんのことを「本当にすごい人」だと語っていました。
小学生の時から、早朝に牛の世話などをして登校する姿を見てきて、一つのことをやり続ける姿勢に、尊敬の念を抱いているそうです。
自分が同じ立場だったら、きっと真似できないだろうと。
優さんの、誠実で、真面目で、優しい人間性。
同級生だからこそ知っている一面を教えてもらうことができました。

──私の波佐見のイチオシ!

地元の農産物が揃う直売所「どろんこの里」です。うちの商品もあります。
納品に行くと、他の農家さんとも会えるし、消費者の方が実際に手に取ってくれているところが見られるのも嬉しいですね。
アスパラは、シーズン中はほぼ毎日持っていきます。
お茶やお米も置いてますよ。お米はオレンジ色のパッケージです!」

長島牧場の商品には、お父様の名前のシールが貼られています。
「産地名:野々川産・生産者:長島辰巳」という記載を目印に探してみてくださいね。
私もこの間、お米を購入して帰ったのですが、炊いたご飯はつやつやで、もちもちとした粘り気と甘み!
とっても美味しくて、我が家のお米の消費量がぐんと増えてしまいました(笑)。

*2021年2月インタビュー
*撮影の時のみマスクを取っていただきました。

長島牧場

波佐見町野々川郷