何年後もずっとこの器で、「いただきます」。
なめらかな曲線にちりばめられるのは、小石原で守り継がれてきた伝統の紋様たち。古から伝わる技法で生み出された焼き物の表情はすべて異なる。「親の背中を見て育ちました。子供の頃から土は遊び道具の一つでしたね」。20歳の時に窯元を継いだ和田さん。多くの焼き物に触れる中で、独自のスタイルを確立していった。「焼き物の色を左右する釉薬には色んな種類があるんですよ。白や黒を目立たせる透明の釉薬や、ベージュの釉薬など様々です」。半乾きの状態で紋様を描き、乾燥させ、素焼きをした後 、釉薬で色をつける。和田さんの作品は白と黒を基調とした、モダンな印象の焼き物が多いのが特徴だ。「収納しやすくて持ちやすい、そして食卓が明るくなるような焼き物を作り続けたいですね」。生活の中で役立つ焼き物を追及してきた小石原焼。その伝統を守り続ける和田さんの焼き物は、使い易さを考え小ぶりの物が多い。 「小石原焼の歴史は400年近くあるんです。その歴史の中でも時代に合わせて焼き物は変化してきました」。すり鉢や味噌壷が求められた昔から、食卓に密着した食器が求められる現代まで、流れゆく時代の流れに歩調を合わせ、日々使い手の気持ちを考えながらろくろを回す和田さん。手に収まる安心感、指先で感じる艶やかさ。伝統的か つモダンな焼き物はご飯をいっそう美味しくさせてくれる。
小石原焼の伝統と、白と黒を基調とした和田さんのスタイルが融合したモダンで艶やかなうつわ。
使い易さを考えられて作られたシンプルなデザインのグラスは、手に持つとそれが実感できる。
並べられた素焼きの陶器。これから釉薬をまとい、本焼きを経て完成となる。
ろくろを回す指先は繊細で、周りの空気を凛とさせる。形作られた土からは手作りならではの温もりを感じる。
Profile
- 和田義弘(わだよしひろ)
- 鶴見窯2代目として、暮らしの中で役立つ小石原焼の作品を作り続けている。2006年の福岡県伝統工芸品展で入賞、他にも様々な展示会に出品。また、個展やグループ展の参加など積極的に活動中。
問/0946-74-2552
写真=高山弘之 文=永溝直子