Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2011.11.10

屋久島宮之浦岳縦走一日目。その2

宮之浦岳が見えてきた。

もう背中が鞭で打たれたように痛い。腰も痛い。強制労働のような行進。
しかし反面、全身に乳酸がかけずり回っているのが心地良かったりもする。
山に登っていると、ときどき自分はマゾじゃないかと思うが、
辱められたりするとぶち切れそうになるのでそれはないだろう。

風が強く、雨も横やり状態で、このまま登っていいのかと躊躇したが
これを越さないと新高塚小屋には行けないので、登るしかない。
宮之浦岳の山頂付近では水が流れる岩場があり、晴れているときでも滑りそうでちょっと怖い。
こんな天気だとなおさら怖い。ずるずる滑りながら、登ったり多少下ったりとアップダウンを繰り返す。
この辺でついに靴の中まで水が入ってくる。ゴアテックス陥没である。
登山靴を長靴だと半ば思っていたが、さすがにこんなに雨がひどくて水浸しの道を歩いていると滲みるんだね。
絶対滲みない靴ってないのかな、などと考えながらひたすら歩いた。

この登山で僕は今後の仕事を含め、生き方とか、ビジョンとかを思い描く予定だったが
浮かぶことは、暖かい布団で寝たい。温かい美味しいものが食べたい。清潔で乾いた服が着たいと、
日常で当たり前に得られていることばかり。

ふと、徳川家康の言葉を思い出す。

「人生とは、重き荷を背負うて、遠き路を行くが如し、急ぐべからず。
不自由を常と思えば不足と思えず、心に望み高ければ困窮しうる時を思え。」

なんだとぉ。今の俺そのものじゃないか。

日常を丁寧に大事に感謝を持って過ごせ、ということか。
ありがとうございます!

とか、考えながらひたすら歩く。登る。下る。
ここで止まったら標高1900メートル。友達誰もいないし、寂しいので早く小屋にたどりつきたい。

ようやく標高1936メートルの宮之浦岳山頂に到着。雨のためザックから5Dを出すのも面倒なのでiPhoneで撮影。
しかし今回の登山は本当に写真が少ない。雨じゃなければずっと5Dを首からかけているのだが。

今年5月の登山では日帰りの宮之浦岳登頂だったのでここから引き返したが、
いよいよここからまだ見たことのない光景に出会えるかと思うとちょっとうれしくなってきた。

ここまでで、ずいぶん追い抜いた。もう僕の先にはほとんどいないんじゃないか、というほど抜いた。巻いた。
単独行というのは休まないんだね。自分ひとりだとなかなか休憩しないんだということに気づく。
これもけっこう気に入った。これから単独行も積極的に行ってみよう。
今からはしばらく下りだ。滑りこけないように注意しながら進もう。
もうすでにここまでで2、3回ヤバいこけ方してる。とにかく動けなくなるようなこけ方だけは勘弁だ。

つつぎは後日〜。次回はいよいよ新高塚小屋に到着。ここでまた事件が…。
写真はiPhone4sで撮ったもの。宮之浦岳を過ぎたあたり。よく撮れるなー、こいつ。