Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2012.11.20

木工作家=関内潔さん

まっさらな自分と生活に似合う、大きな銀杏のまな板。

 「木という素材そのものを感じられるようなものづくりを心掛けています。自然にあったものを家の中に持ち込む実感と、その来歴を感じてほしいですね」。木工作家・関内潔さんは、一言ひと言心の内を確かめるように作品についてを語る。今回エフ・ディプロダクツでは、“1枚目のまな板”というテーマで関内さんにプロダクト制作を依頼した。まっさらな暮らし、何も持たない生活から一つひとつ道具を選択していくとき、人は何を必要とするだろうか?話し合いを重ね、完成したのは“サイズが大きく、刃当たりのいい銀杏のまな板”。「過不足なくすっきりとした、当たり前の形。それが1枚目のまな板に必要な要素だと考えました」。滑らかな四隅のアールと美しい木目。シンプルな中にも柔和な作家性が宿る。「節や木目は自然の産物ですが、目立ちすぎると使い手の手を止めてしまいます。特にまな板は目に見える部分が大きいので、素材のコントロールにはいっそう気をつかいました。毎日使うものなのですんなり扱えて、台所に置いていても喜びを感じられるものが良いですよね」。生活の道具は用途を満たしていれば事足りる。しかし道具に作家の息吹が込められたとき、それは使い手とともに生きる作品ともなり得るのだ。

木は時間が経つごとに反りやねじれが出てくる。今回は期間を置いて4回に分け、表面を削り反りをとっていった。

木目のつながった大きな1枚の板から、さらに1枚ずつまな板を切り出していく。1本の木であったことを想像させるものづくりである。

材質選びからサイズ、厚みなど隅々までこだわり試作を繰り返した。銀杏は適度な油分を含んでいるので水はけも良く、まな板に適している。

Profile

関内潔(せきうちきよし)
1994年より横浜にて注文家具の仕事をはじめ、結婚を機に八女市に移住。工房を構える。使い手とのコミュニケーションを大切にしたものづくりを行なっており、家具の他、お弁当箱やカトラリーといった小物も手掛けている。
住/八女市国武528 問/0943-22-5197

写真=石川博己 文=柳田奈穂