Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2012.6.6

新羅凧職人=鈴木召平さん

新羅凧職人=鈴木召平さん
新羅凧職人=鈴木召平さん
新羅凧職人=鈴木召平さん
新羅凧職人=鈴木召平さん
新羅凧職人=鈴木召平さん

空高く舞い上がる、凧に乗せた果てなき夢

 無駄な装飾のない、ごくシンプルな四角形の凧。この凧が上空5000mまで昇っていくことを、誰が想像出来るだろうか。古代朝鮮半島南東部に存在した国家新羅で、かつて“空の信号”として使われていたのが新羅凧だという。釜山で生まれ育った鈴木さんは幼い頃、凧が作られる様子を真剣な眼差しで見つめていた。「46歳の時、“凧を作りたい”そう思い立ちました。幼い頃の記憶をさかのぼり、作ってみたら形になったんです」。それから37年間、80歳を過ぎた今でも鈴木さんの凧づくりは続いている。「凧の真ん中に空いている穴は、スピードを出すための知恵です。紙を支える骨の部分も、人体構造に基づいた黄金比なんです」。凧をより高く上げることを追求した結果、強度のある八女の和紙や京都の色紙に辿り着いた。天候や気流など、すべての条件が整った時、風に乗り、凧は瞬く間に大空に舞い上がってゆく。「いつか四国産の和紙でも作ってみたいです」。そう言って凧を見つめる鈴木さんの目には、鮮明に未来への夢が映し出されている。「もっと高く揚がるかもしれない」。そんなシンプルで果てしない、鈴木さんの夢を乗せた新羅凧は、どこまでもどこまでも、空高く飛んでゆく。

新羅凧職人=鈴木召平さん

黄金比に基づくという一寸の狂いもない凧づくりは、熟練した技術を持つ鈴木さんだからこそできる技。

新羅凧職人=鈴木召平さん

凧と鈴木さんを繋ぐ糸枠。糸は丈夫な建築用の糸を使用。凧を操縦する技術も高く揚げるためには必須。

新羅凧職人=鈴木召平さん

鈴木さんのアトリエ。黒板には新羅凧の構造が記され、まるで研究室のようだ。

新羅凧職人=鈴木召平さん

作家として、詩人としても著書多数。鈴木さんの凧にはどこか詩的な趣があり、望郷に念にかられる。

Profile

新羅凧職人=鈴木召平さん

鈴木召平(すずきしょうへい)
昭和3年、韓国・釜山生まれの新羅凧職人であり凧揚げの名人。文筆家としても著書多数。鈴木さんの凧は、赤坂の工藝店「工藝風向」で購入できる。

写真=柳田奈穂 文=加治屋愛子