Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2012.6.5

久留米絣工房  津留織物=津留政次さん

久留米絣工房=津留織物
久留米絣工房=津留織物
久留米絣工房=津留織物
久留米絣工房=津留織物
久留米絣工房=津留織物

“いま”と“むかし”。時代が織りなす、絣というやわらかな布。

 福岡県南部に位置する八女市広川町。この町には現在13の絣工房があり、今もその歴史を紡ぎ続けている。絣の特徴はたて糸とよこ糸が織りなす繊細で素朴な柄の美しさ、そして木綿ならではの肌触りの良さと丈夫さだ。『津留織物』はその中でも特に細かく、緻密な柄を得意としてきた工房である。四代目織元である津留政次さんが織屋を継いだのは34歳の時。「大学を出て営業職に就いたんですが、売りたいものを売れない事にジレンマを感じるようになったんです。本当に良いものを売りたい、それなら自分の家で、良いものを作ろうと思いました」。絣のことを何も知らない分、伝統にとらわれることがないと政次さんは語る。代々受け継がれる柄に現代的な色味を加えた津留織物の絣は、元来の渋い絣のイメージとは違い伝統的でモダン。「イベントに出展していると、“かわいい!”と言って興味を持つ若い人も多いんですよ」。木綿の持つやわらかなイメージと小さくかわいらしいパターンは、女の子の心をつかむには充分だ。営業経験のある政次さんが加わったことで、人の目に触れる機会も多くなった。「まずは知ってもらうこと、そこからです」。絣は新しい空気をまとい、更なる伝統を重ねようとしている。

均一に糸を伸ばすため天日干しを繰り返し行なう。津留織物では生地を傷めない様に草を生やしている。細かな織のズレにより絣が擦れているように見える事から“かすり”と呼ばれるようになった。

化学染料だから出せる鮮やかな色目。伝統の柄に新たな魅力を加える。

絣を用いたストライプシャツ。政次さんは絣を使った製品開発も行なっている。

久留米絣工房=津留織物

昔は農家の副業として多くの女性が織手となり、機の音が聞こえない日は無かったという。

Profile

久留米絣工房=津留織物

津留政次(つるせいじ)
久留米絣製造販売「津留織物」四代目織元。伝統的な柄と化学染料ならではの鮮やかな色目の組み合わせが特徴的。久留米絣を用いたファブリックの制作など、積極的に新しい試みを行なっている。
問/0943-32-0447 住/八女郡広川町大字新代2018-1

写真=石川博己 文=柳田奈穂