Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2011.3.30

からくや倶楽部=岡村修さん

からくや倶楽部=岡村修さんの手掛けた仕事「カヨカリ」

古民家再生プロジェクトがつなぐコトとコト。ゆっくりと物語が動き始めていく。

古民家再生プロジェクトが動き始めたきっかけは、阪神淡路大震災だった。当時建築士として現地調査を行っていた岡村さんは、倒壊した建物ばかりを映し、古民家の危険性を訴えるメディアに憤りを感じたという。「日本の伝統的な家屋というのはこの国の素材で作られ、気候風土に根ざした形をしています。そして何百年も受け継がれた技術によって建てられているんです」。その技術が途絶えてしまわない為に、古民家を一軒でも残したい。そんな思いから古民家再生プロジェクトは始まった。「今の住居とは用意された箱の中に入っているようなもの。自然と環境に応じ、自分たちの手で工夫して作りあげていく家こそが、本来の住居だと思うんです」。そんな岡村さんの考えに賛同する者が集まり、「からくや倶楽部」が生まれたのだ。

からくや倶楽部=岡村修さん。

からくや倶楽部では個人での家づくり、店づくりを支援している。自分のお店をオープンしたいと思うと、まず資金や現実的な問題により行き詰まってしまう。その背中を押すのが岡村さんだ。「古民家の木造アパートは家賃がとても安いんです。内装屋さんに入ってもらわず、みんなで助けあって作れば、お金をかけない状態でスタートできます」。必要なものは店をオープンし、売り上げで揃えていけばいい。お客さんが入ってこれる状態にするのが自分の役目で、そこから先が本当の店作りだと岡村さんは言う。そして、お店の具体的なイメージが決まると“今度こんなことを始めるけど協力してくれないか”という岡村さんの呼びかけで、大工や塗装が得意な人が集まってくる。皆それぞれ本業がある人だ。
その岡村さんが現在最も力を入れているのが「夢を育てる」こと。「一人では実現できない夢も、みんなで工夫し、試行錯誤していく中で実現することができる。ブレーキは走り出してから踏めばいい。まずは、めいっぱいアクセルを踏むこと。」ちっとも儲からないという岡村さんに、それでも活動するのはなぜか尋ねると、「おもしろいから」と笑って答えてくれた。
コトとコトがつながっていく幸せな連鎖。次に動きはじめるのはあなたの物語かもしれない。

からくや倶楽部=岡村修さんの手掛けた仕事「桜坂・さくら荘」

桜坂・さくら荘 木造アパートを再生、名前もさくら荘と改めた。個性的な店舗が並ぶ。写真は古道具るごろの入り口。住/福岡市中央区桜坂2丁目 1-44

からくや倶楽部=岡村修さんの手掛けた仕事「かもめ食堂」

かもめ食堂 木造アパート「あさだ荘」の3号を再生。自然食材にこだわったカレーとデザートを楽しめるお店。問/080-2720-6096 住/福岡市南区大楠3-7-26あさだ荘3号

からくや倶楽部=岡村修さんの手掛けた仕事「江戸そば・侘介」

江戸そば・侘介 古民家を再生して作られた店内。岡村さんの進行する「食を育てるプロジェクト」により、店主自らがそばを育てている。問/092-285-4217 住/福岡市中央区白金1-14-2

からくや倶楽部=岡村修さんの手掛けた仕事「カヨカリ」

カヨカリ からくや倶楽部で古民家を再生。趣きのあるあたたかな空間で、本格的なスープカレーを。住/福岡市中央区高砂1-18-6

Profile

からくや倶楽部=岡村修さん

岡村修(おかむらおさむ)
大阪府出身。一級建築士。1995年、古民家・古材を活かすネットワーク「古材市場」を設立。古材を活かした家づくりを行う。現在「森を育て、食を育て、夢を育てるプロジェクト/楽庵楽塾」を進行中。
問/090-5728-5312 住/福岡市中央区白金1-5-8向田荘6号住環境設計オカムラアトリエ

写真・文=柳田奈穂