綿柎開(わたの はなしべ ひらく)。
春分や夏至など、半月ごとの季節の変化を示す「二十四節気」を
さらに5日ずつに分け、気象の動きや動植物の変化を知らせる「七十二候」。
せわしない日々の中でも、小さな季節の移ろいに気付ける心の余裕をもちたいと、
時折、調べてみたりします。
ステンドグラス作家の久保淳子さんが新たに手掛けた、紙と糸を使った箱のアート。
その初披露となる作品展「かみ いと はこ」が行われた8月27日は、
七十二候の「綿柎開」でした。
綿を包む柎(はなしべ=花のガク)が開き始める頃。
はじけた実の中から顔をのぞかせる、ふわふわとした白い綿毛は糸となり、
久保さんの手によって、素晴らしい作品へと生まれ変わりました。
これまで久保さんには、ステンドグラスのワークショップを開催してもらっていて、
作品のモチーフの多彩さや、ガラスの色合わせの妙、精緻なつくりに驚かされていましたが、
さらに今回の新しいアートワークときたらもう!
クリエイターとしての多才さには、舌を巻くしかありません。
いつもはMacが並んでいるデザイン塾のテーブルが、色とりどりの作品に埋め尽くされ、
それ自体がまるでインスタレーションのよう。
一つずつ自分の手に取り、(じかに触れるアートって、良いですよね!)
箱の蓋をそっと開けてみる時のワクワク感。
目の前に繰り広げられる、思いもかけない造形への衝撃。
重みを掌に感じながら、くうるりと回しつつ様々な方向から眺めれば、
角度によって異なる表情が現れてくる面白さ。
この驚きと感動を、うまく伝えられないのがもどかしいのですが…。
どんな緻密な設計図を描き、どのようにして作られたのか、皆目見当もつかない複雑な形状。
一体、どこからアイデアが湧いてくるのでしょうか。
頭の中を一度のぞいてみたいものだ…と思っていたら、
タイトル「わたくしのわたくしたるゆえん」という、久保さんの脳内が垣間見えるような作品もありました。
ワークショップ「かみといとでつくる、ちいさなアート」も開催。
二つ折りの小さなカードを開くと、
あやとりのように、糸が美しい模様を立体的に描く作品を教えていただきました。
この小さな作品の中にも、さまざまな創意工夫が盛り込まれ、
カードを収納するケースの、幅1mmのマチの部分といった細部に至るまで考え抜かれており、
ただただ、感嘆するばかり。
糸が弛むことも、引きつることもなく、同じテンションで美しい形にするのは、なかなかに大変で、
気が付くと、集中しすぎて呼吸することさえ忘れていることも…。
自分で体験した後に、改めて作品を見てみると、その凄さがさらに身に迫ってきました。
ワークショップには、塾長・石川も参加。
その様子は塾長のブログ『Rimen』でもお伝えしております。
「次のステンドグラスのワークショップはいつですか?」との声もありましたし、
実は箱の中に、これまた久保さんの新しい作品である
レザーでつくられたブローチが入っているものもあったのですが、
そのブローチをつくるワークショップも面白そうだなぁ…なんてことも密かに考えておりますので、
次の企画を、ぜひ楽しみに待っていてくださいね。
素晴らしい世界を見せてくださった久保さん、
そして、暑い中お越しくださった皆さん、どうもありがとうございました!
久保淳子 作品展「かみ いと はこ」
〜小箱に宿る、紙と糸でつくられた美しくも繊細な世界〜
開催日時:2017年8月27日(日)11:00〜18:00
開催場所:エフ・ディ事務所
*ステンドグラスのワークショップについては、こちらをご覧ください。