Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2015.4.22

Report: 視点採集「箱崎」編

フォトレッスン視点採集「箱崎」編、終了しました。
ここ一週間連日の雨。天気予報も雨の予報で心配していましたが、なんと晴れ!
クリエイティブツアーも最近は微妙な天気が続いていたので、
すっかり雨男(塾長、石川です)になってしまったんじゃないかと心配していましたが良かったです。

本日は朝の7時半集合。とても早いです。
でも写真を撮るなら朝ですよ!朝の光はきれいですから。
ぞくぞくとみなさん集合され視点採集の開始です。

本日の視点採集の舞台は「箱崎」。雰囲気のあるところです。
筥崎宮に集合して周辺を散策。箱崎の名物「ナガタパン」でパンを買い、九州大学箱崎キャンパスへと向かいます。
歴史を感じる建物のあるこのキャンパスはとてもフォトジェニック。どこを撮っても絵になります。
建物が黒く汚れているように見えるのは戦時中に空襲を免れるために迷彩塗装されていた名残だということ。
知りませんでした。汚れているのかと思っていました。
石造りや煉瓦造りの建物はアールデコ風なデザインが施され、意匠性が高く見ていてわくわくします。
伊都キャンパスへの移転のため、これらの建物の一部は残るものの、ほとんどは取り壊されてしまいます。
なんとももったいないことです。
この季節、緑がいきいきとしていて美しいですね。桜は散ってしまいましたが、くす玉のような八重桜が咲いていました。

まず、この視点採集のご説明を。
視点採集というフォトレッスンは、自分なりの視点で撮影しましょうという意味と、
人の視点で撮られた写真を見ることも“視点”の気づきになるという意味をもっています。
カメラの使い方を知ることは写真の基本ですが、今や誰でも押せば写るカメラ。
写らないという昔の失敗はありません。だからこそ、何を撮るかという“視点”が大切になるのです。

視点採集では、

①撮影(毎回ロケーションが変わります)
②現像(フィルムの人)〜昼食
③写真セレクト(撮影したものから10枚をセレクト)
④発表(どういう視点で撮ったのかを発表してもらいます)
⑤歓談(写真談義と石川の世間カメラ話)

という流れで進みます。③からF_dの事務所に場所を移して行います。
朝からびっちりのスケジュールです。吐きそうな人もいるかもしれません。

今回、九大箱崎キャンパスでは「旧工学部知能機械実習工場」という工場も見学しました。
当時の大学はキャンパス内に工場まであったんですね。すごいですね。まるで小さな町です。
今でも散髪屋さんとかもあり、なんでもあった時代がかいま見えるようです。
九大敷地内も含めて案内してくださった助教授の三島さん、ありがとうございました。

箱崎の町や九大キャンパス内のことなど、書きたいことはいっぱいあるのですが
僕のブログのようになってしまいますので、本題の視点採集のみなさんの写真を見ていきましょう。

では、ご紹介します。

まずは、クリエイティブツアーにも参加してくださっているM.Eさん(男性)。デジタルカメラでのご参加です。
写真について今さら学ぶことはないくらいのキャリアをお持ちのM.Eさんは、実はこの九大が母校とのこと。
さらに教員として働いていた時期もあるとのことで、懐かしい母校を見納めしたいとのことでした。
感慨深い眼差しで撮影されていました。その“視点”をご覧ください。

次はMasako.Nさん(女性)。デジタルカメラでのご参加です。
歴史のある箱崎を「重なる」という視点で切り取られた写真です。
構図として重なりを切り取ったものから、時代の重なりを切り取ったものまで「なるほど〜」という視点でした。
僕が好きだったのは樹々の葉の重なりから覗くブルーの窓ガラスの写真でした。

次はY.Iさん(女性)。フィルムカメラでのご参加でした。フィルムならでは質感がいいですね。
箱崎キャンパス内で撮られた、キノコのように空に伸びるダクトの写真が印象的でした。
歴史的な建物があるなかで、何の変哲もないプレハブっぽい建物に視点を向けていたとはびっくりです。
それをしっかり絵にするとはセンスいいですね。

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次はA.Kさん(女性)。こちらもフィルムカメラでのご参加です。
絡みつく植物を通して箱崎の歴史を切り取った写真です。
磨りガラスの向こうに見えるツタの葉が美しいですね。すごくいい写真です!
アンダー気味に撮ることによって、磨りガラスの微妙な色までも切り取ったすばらしい一枚です。

次はY.Mさん(女性)。こちらはデジタルカメラでのご参加です。
ズームレンズをつけていましたので、今日はその中の35mmの画角だけで固定して撮ってみましょうとアドバイス。
また絞りはF:5.6に。
画角を固定したのは写真に統一感を出させるためと、
固定することで“自分は動かないで撮る”ことをなくすためです。
広角から望遠まで撮れるズームレンズだと、被写体との距離をレンズがとってくれるため、
自分が動かなくても何でも撮れてしまいます。
いい写真というのは構図も大きく影響します。そのためには被写体との距離、間合いが大切です。
その間合いを習得するにはやはり動くことです。ズームだとその間合いを習得しづらいのです。
絞りを5.6にしたのは、シャッタースピードについて注意を払う練習です。
この辺の話をしだすと長くなりますから、視点採集でレッスンしますので是非ご参加を^^

Y.Mさんの視点は感触、手触り。その場や物の質感が感じられる写真です。
ペンキのはがれた赤い鳥居の写真は、そうした視点がなければ撮れなかったかもしれません。
最初にちゃんと視点を決め、細かく観察したからこそ撮れる写真。
ひとつひとつの写真を見ていると、まるで実際に触って、その質感を直に感じられるような気がしてきます。

次はH.Mさん(男性)。フィルムカメラでご参加です。
H.Mさんの視点は光。マニュアルカメラということもあり、露出決定にすごく神経を注いでいました。
写真は光を写し込むもの。
その場の雰囲気や自分の感じた気持ちを絶妙な光で写し取ることができたらと、誰もが目指すところですね。
工場内の使い込まれた道具を撮った一枚はすばらしい光ですね。
朝のハレーション気味の境内や、影の伸びる箱崎の路地の写真も好きです。うまいですね!

次はMayumi.Nさん(女性)。デジタルカメラ・ズームレンズでのご参加でしたので、
やはり35mmの画角に固定して撮ってもらいました。
すでに写真キャリアもある方で、さすがに構図もいいですね。
意図的にアンダー気味の露出で撮られていて、重みがあって箱崎の歴史を感じさせる一枚一枚に仕上がっています。
トンネル効果をうまく使った写真を撮られていて、丸いミラーに映る緑の写真はその最たる一枚ですね。
工場内の写真は陰影の効いた重厚感があり、しんと静まり返った空間をうまく切り取っています。

次はY.Sさん(女性)。フィルムカメラでのご参加です。
Y.Sさんの視点は「上を見る、見上げる」です。(本人曰く、毎日うつむいて日々を過ごしてるので…とのこと。)
階段を下から見た写真はどこだかわからなかったです。
同じところを歩いていてどこで撮ったかわからないなんて、もうやられた!って思いましたね。
葉の裏側を見たり、ここは何もないなと思っていた道の横のビルの窓を撮っていたりと
Y.Sさんの視点は自由自在ですごいですね。いやー、勉強になりました。ほんとに。
ついつい自分がもっていた“ここは何もない”という先入観を改めさせてもらいました。
写真もいい感じです!トタンの隙間から差し込む光などいいですね。
僕が好きなのは「階段」と、どこにもピントを合わせずに撮った「樹々と木漏れ日」の写真です。
樹々の写真などは、写真としてはありふれているかもしれませんが
「上を見る、見上げる」という視点で撮られた写真の中で見ると、また違った意味を感じます。
人の目にはこんなにボケては見えないですが、写真だとこういう見え方もできるんですね。
写真でしか見られない光景というものがあるのが、写真の良さでもあると思うのです。

次は母娘で参加してくれたYさん。まず娘さんのK.Yちゃん(女性)から。最年少です。カメラはデジタル。
Kちゃん、実はカメラ上級者でした。テレビ番組の写真甲子園で準優秀したことがあるとのこと。
今回一番「おお!」と感心させられた視点でした。
その視点は「気配」。
水たまりもそれは過ぎ去った雨の気配。壁の中に置かれた松ぼっくりは子供の気配?
車の窓ガラスに映るのは雲から覗く太陽の気配。
中でもすてきな一枚は、3枚目のカメラを意図的にぶらすことで表現した初夏の風の気配。見事です!
最初に視点をはっきりと決めていたから撮れる写真ですね。
参加者一同を「おおっ」と唸らせる視点でした。
クモの糸にひっかかった桜しべは虫の気配です。女性らしい一枚ですね。

次はお母さんのM.Yさん。
お母さんは最近流行の性能の良いコンデジで参加されました。
今回の参加の理由は、もう少しカメラを使いこなせるようになりたいからとのこと。
視点を決める余裕がありませんでしたとのことですが、一応視点は「ニョキニョキ」ということで。
地面から生えているようなということでしたが、最後の鉄格子の写真で破綻してしまいました^^;;
レッスンの途中で「ピントを手前に合わせて奥をボカす」という、今まで知りたかった撮り方がわかった瞬間、
そればかり撮ってましたとのこと。
参加の目的は果たせたようで、それはそれで良かったです。^^;;
しかし、こんな比率の写真が撮れるんですね。今のコンデジは。比率を見て「へー」となっていました。
お仕事で庭のスタイリストのようなことをされているので、植物に詳しいんですね。
視点はどちらかというとその“植物”の視点になっていたようです。
発表でも植物の名前が真っ先に口から出ていました。

次はJ.Kさん(男性)。フィルムカメラでのご参加です。
視点は「ココロが感じ、カラダが動いた、瞬間の記録」ということです。
昔撮っていたフィルムカメラを久しぶりに引っ張りだしての参加ということで、ちゃんと写っているかなと言っていましたが
ベタをとってみるときれいに写っていました。学生の頃から写真をやっていたそうなのでさすがですね。
ご自身の好きなものを撮ったという感じでしょうか。
風景から工場の床下の割れ目まで、ミクロからマクロの視点でのびのび撮影されています。
撮影を楽しんでいる様子が感じられます。

最後は視点採集のスタッフでもある R.H(女性)。フィルムカメラで参加です。
クリエイティブツアーやこの視点採集を通してフィルムカメラに傾倒、散財している彼女の視点は「人工物と植物」。
その対比を通して箱崎らしさを切り取っています。
散財しているだけあってめきめき腕を上げているHの写真はいい空気感をだしています。
寝癖のように歪んでいる樹木とアールデコ風デザインの建物の組み合わせがいい感じです。
枝に引っかかったような飛行機はアンダーで切り絵のようなコントラストを出しています。うまいですね。
ツタの茂った壁とその壁の向こうに建物が写っている写真。
その間に無惨に切り取られた樹々が、人工物と植物の間のなんともかなしい存在感をだしています。
これらの写真も最初にしっかり視点をもっていたからこそ撮れる写真ですね。

この記事をご覧のみなさん、いかがでしたでしょうか。
人の視点を見るのって楽しいですよね。実際に聞きながら見るのはもっと楽しいですよ!
そして、参加されたみなさん、丸一日おつかれさまでした。

また次回の視点採集でお会いしましょう。
さよなら、さよなら、さよなら。(古いか!)

Y.Sさんが撮ってくれた写真。大好物のミニストップの期間限定あまおうのソフトクリームを食べる石川です。

視点採集「箱崎」編/2015年4月12日(日)開催