〜建築家・イノウエサトルが見てみたい風景〜
第6回目となるクリエイティブツアー、
今回は建築家・イノウエサトル氏の考案から始まった、「風景」をめぐる旅です。
長崎市外海地区、世界遺産候補にもなっている出津教会周辺や大野教会、
そして棚田百選にも選ばれている、大中尾棚田を巡ります。
また、イノウエ氏が建築した住居を見学させていただきます。
土地が持つ力を顕在化させる
イノウエ氏が建築をする上で気をつけているのは、「土地がもつ力を顕在化させる」ということ。
それは、その土地固有のあり方を探す作業とも言えます。
そしてその作業によって生まれた状態が、永い時間をかけてその場に定着し、
いつしか風景となることを目指しているのだと語ります。
そんなイノウエ氏が見たい風景、それは「先人たちのシゴト」。
そこでイノウエ氏は“ランドスケープ・アーキテクト”木藤亮太氏を招き、
先人たちのシゴトを教えて欲しいと考えたそうです。
「風景」が「風土」へと変わる。
それは失われるものの方が多い現代において、“残り続けているもの”の象徴と言えるでしょう。
長い時間残されているものには必然性があり、また、「残したい」という人々の意思なくしては不可能なこと。
時間をかけ、環境の中で風景が定着していき、風土になっていくのです。
先人たちのシゴトが地域の人々によって受け継がれ、残り、定着する。
イノウエ氏のリクエストに応え、木藤氏がそれらを象徴する風景を紹介し、
「風景」「風土」というものの成り立ちを紐解いていきます。
そして、現代を生きる作家、イノウエ氏の建築作品を巡ります。
それは住宅であり、しかしいつか、長い年月をかけて風景に定着し、ランドマークにもなり得る建築なのです。
タイムテーブル
*下記行程・時間配分は変更になる場合があります。
7:30 | 福岡・天神出発 |
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9:30~10:30 |
針尾送信所 大正11年、旧日本海軍の手によって4年の歳月と時価250億円の費用を投じて建設された無線塔。 高さ135m、周囲33m、塔の底面積123㎡という巨大な3本の無線塔は、 日本人による設計、コンクリート技術による初期の高層建造物です。 国家の重要な通信施設として「そこに存在しなければならなかった」という、 その絶対的な場所性、必然性。 また、送信所としての役目を終えた今も遺され、ランドマークへと定着したその佇まいに、 イノウエサトル氏は何を見出すのでしょう。 |
10:40~11:10 |
新西海橋 長崎県佐世保市の針尾島と西海市との間にある伊ノ浦瀬戸を結ぶ橋。 桁下の歩行者専用道にある展望台からは、1955年の建設当時には東洋一とまで言われた 上路式鋼ブレースドリブ固定アーチ橋である西海橋や、針尾送信所を見ることができます。 |
12:00~13:30 |
大中尾棚田見学・棚田米の特別昼食 日本棚田百選にも選ばれている、大中尾棚田。 現代農業のようにポンプもない時代に、 上から下へと水を循環させる仕組みを作り、集落全体で稲作を行なってきた棚田。 その景観の美しさは、「食」という生きていくために必要な行為がみせる、人為的な風景です。 そこには人間の叡智と自然が混ざり合っているからこそ、 より強力に「自然」という力が存在しているのだと、イノウエサトル氏は語ります。 こちらで穫れた棚田米でつくったおにぎり、お漬け物、おにしめなどを頂きます。 長い年月をかけて構築してきた先人たちのシゴト、 人間と自然が融合した風景を前に、風を、光を感じながら食べる食事。この上ない、贅沢な時間です。 |
14:00~14:45 |
大野教会 海を見下ろす傾斜地に、静かに佇む教会。 フランス人のマルク・マリー・ド・ロ神父の設計と指導により建てられた、 平屋・瓦葺きの教会です。 独特な石積みの壁は「ド・ロ壁」と言われ、風土にあった材料と技術を上手く活用した、 とても貴重な建築だと言えるでしょう。 100年以上もの間その姿を維持しているのは、地元の信徒さんたちの信仰心。 マリア像の足元には瑞々しい花が飾られ、教会周辺は常に清潔に保たれています。 信仰の自由が奪われるという歴史、隠れキリシタンの潜伏地となった集落という環境。 さまざまな要因が重なり合い、120年という時をかけて、風景へと定着しています。 |
14:50~15:30 |
出津教会周辺 キリスト教の迫害と復活、その両方の舞台となった長崎県外海地区。 ド・ロ神父が移り住み、明治15年に教会を、そして街を築いた場所です。 さらにはマカロニやそうめんを生産する作業場を設けることで、集落に新たな産業をもたらしました。 出津教会周辺の作業場などの施設は、まとめて「出津救助院」と呼ばれています。 また、特徴的な「ド・ロ壁」も随所に見ることができます。 |
16:00~16:40 |
イノウエサトル作品・オルハウス 道路沿いにおいて異質な、白く美しい形状の建築。 車の往来も多く、110㎡という狭い土地。生活に適していない土地であるにも関わらず、 施主であるご夫婦は環境を肯定的に捉えていたのだと言います。 「かっこ良い家にしたい」というご夫婦の想いに対し、 イノウエ氏は「いかに周囲に対して開かれた建築を創るか」ということをテーマにして建築。 この「オルハウス」は、第6回 建築九州賞・住宅部門作品賞に選ばれています。 実際に生活がはじまった上で、その空間を見せていただく、とても貴重な時間です。 |
17:00~17:40 |
イノウエサトル作品・ガゼボハウス 「敷地の特徴が生み出す光景や体験を失うことなく、むしろ強化すること」を主題に設計された建築。 眺望や開放感、明るさ。そして刻々と変化する自然の移ろいを、余すことなく取り込んだ、 「環境に棲む」という状況を生み出す建築作品です。 こちらも、施主であるご夫婦、 そしてお子様二人が実際に暮らしている住宅を拝見させていただきます。 |
17:50 | 長崎を出発 |
20:00 | 福岡・天神にて解散 |
お申し込み
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