Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

Read

editF_d

2015.2.12

西新フォトツアー vol.2 写真紹介

昨年の11月24日、西新のまちを歩きながら写真を撮るフォトツアーvol.2を開催し、
建築家の井上聡氏を案内人に「繋がりを写そう」というテーマで撮り歩きました。

参加者の皆さんが撮られたお写真の中から、井上聡氏が2枚セレクトしてコメント付きでご紹介いたします。

 

石津 美保子さま

西新フォトツアーvol.2 西新フォトツアーvol.2

店からはみ出して道に陳列される商品。こういった存在が街並みに潤いを与え、楽しげにしてくれることがあります。
派手なノボリとか看板なんかはあまりよろしくないけど、緑のチカラって偉大。
石津さんが写したのは店の内部と道という外部の繋がりの部分とも言えますね。
それと古い民家の前を颯爽と(?)歩く女性の姿は、建物に使われている白と女性の上着の白が時代を超えてシンクロしていて、何か気になるショットになっています。

 

伊藤 亜美さま

西新フォトツアーvol.2 西新フォトツアーvol.2

石とロープでできた人形。
背景の陽が差し込む窓は適度にボカされて、おとぎの国のようなメルヘンな世界感が生まれています。
一方で買い物に熱中する人々と雑然と並ぶ商品はまさにリアルな描写。
伊藤さんにとって商店街は、こうした両極を撮影を通して行き来できる宝の山なのかもしれません。

 

江頭 誠さま

西新フォトツアーvol.2 西新フォトツアーvol.2

江頭さんが撮られた写真は、メインテーマとして捉えているように見える被写体とは別の存在を感じるものが多くありました。
古い民家を美しく撮ろうとしたら、普通であれば影が落ちてない部分を切り取るか、時間をずらして撮ろうとするかもしれません。
しかし、大きな影を落とす存在が隣接してあることは都市のリアルです。
逆に、路地を写したものは、右側の壁をあえて排除しています。
奥に行くと狭いようですが、写っていない部分はどうなっているのでしょうか、、、壁の存在が逆に浮き彫りになり、路地の狭さを再認識します。

 

大江 マリ子さま

西新フォトツアーvol.2 西新フォトツアーvol.2

大江さんは、古い民家の前をベビーカーを押して歩く若い夫婦を撮り、「時間の繋がりを写した」と言われました。
お見事。
3人の女剣士(?)が並んで歩いている姿は、西南大学と街の繋がりを、
そしてこれから生涯続くであろう部活動を通した人間関係の繋がりを感じさせます。

 

永野 雅子さま

西新フォトツアーvol.2 西新フォトツアーvol.2

商店街の中にある雑貨屋さんで、紐に通されて宙に浮いている色々なオブジェの中から、
永野さんは鳥を選び、そして向こう側にある窓を背景にして撮影しました。
囚われの身であるはずのこの鳥は、真っ白な背景を与えられたことにより、
空で自由に生きる生き物として輝いて見えます。
そしてこのネコちゃん。西新商店街の人気者。
野良猫のような自由はないけれど、このお団子屋さんと優しいご主人という背景があってこそ生き生きとしているのです。

 

廣川 絵里さま

西新フォトツアーvol.2 西新フォトツアーvol.2

建物と建物の隙間に、望まれたわけではなく偶然生まれたこういったスペースが魅力を放つことがあります。
この路地は、緑色の人工芝が貼られており、、、。
この安上がりな方法は、なかなかその存在に気づいてくれない歩行者に対する苦肉の策としてのアピールなのか、
魅力を増すための装飾なのか。
いずれにせよ人通りから奥にあるスペースを繋げる方法です。
街並みの向こうに見える福岡タワーなど、廣川さんは様々な「繋がり」を発見してくださいました。

 

福田 祐子さま

西新フォトツアーvol.2 西新フォトツアーvol.2

福田さんは積極的に白黒写真を撮られていました。今の時代、後からでもボタン一つで白黒にできるわけですが、
白黒で撮ると決めて撮った場合、少しモノの捉え方が違ってくると思います。
僕の場合、光に対してよりセンシティブになるような気がします。
福田さんは道に落ちている文字を発見しました。切り文字サインと光のチャーミングな悪戯。
そして、フォトジェニックな高取焼の登り窯は、皆さんたくさんシャッターを押した場所だと思いますが、
不思議なことにこのアングルで撮ったのは福田さんお一人だったのです。
段々になっている屋根が、緩やかな傾斜地で成立する登り窯をより強く認識させてくれます。
建築を生業とする僕としてはドキっとする一枚でした。

 

松浦 実加子さま
西新フォトツアーvol.2

西新フォトツアーvol.2

アメリカ国旗、ジャニーズタレント、保険会社のキャラクターそして鯉のぼり。
見事なまでに街の雑然ぶりを秩序だてて写しだしました。
この光景を「楽しい」と捉えるか、「統一性がない」などと否定的に捉えるか・・・それはこの写真をみる人に委ねられるのかもしれません。
それと、交差点を写した写真。他にもたくさん良い写真があったのに、なぜかこの写真に惹かれました。
信号待ちから解き放たれ、商店街が動き出したという感じの躍動感が映し出されているような気がするのです。
一時的に分断された商店街の軸が改めて「繋がった」感じ。

 

松澤 里香さま

西新フォトツアーvol.2 西新フォトツアーvol.2

松澤里香さんは、商店街の店主たちの「手」を中心に撮影されました。
が、これは連ねて見てはじめて面白さがわかるので、セレクトは2枚という制約のためにあえなく手シリーズは断念。
道路から奥深くにある店舗への細く長いアプローチを、お子さんが走ってくるショットを選びました。
子供を撮るのって、どんなに技術を持っていてもお母さんによる撮影には敵わないんですよねー。
子供は気を許して生き生きしているし、お母さんのお子さんへの眼差しは、ステキな一瞬を見逃さないからでしょう。
看板とはいえ、長谷川町子さんが描くサザエさんの息子や兄妹に向ける優しい眼差しをうまく捉えた一枚も選びました。

 

松澤 花凪さま

西新フォトツアーvol.2 西新フォトツアーvol.2

車止め(柵)の上に並ぶ小鳥のオブジェを、極端なまでにクローズアップして撮った一枚。
おかげでこの鳥にピコリーノという名前があることを知りました(笑)
そして紅葉の一枚。
気になったり好きなものにたいする素直な近づき方が気持ち良い2枚を選びました。

 

松澤 皓佑さま

西新フォトツアーvol.2 西新フォトツアーvol.2

小学生の皓佑君は、オモチャのカメラでとにかく気になるものをパシャパシャと撮っていました。
(ツアー参加者や店員さんなど、綺麗なお姉さんが多かった!)
そんな中、ドキッとする一枚が。
道路から奥まったところに玄関とちょっとした庭があるステキなスペースがあるのです。
肉眼でみるととても気になる場所なのですが、写真に撮るとなぜかその魅力が失われてしまいます。
皓佑君がここを撮ったことも驚きですが、彼のオモチャカメラは、向こう側にある光だけを写しだしていました。
そうなんです。ここの魅力は、僕らが勝手に入ることを許されない向こう側に満ちたミステリアスな「光」だったのです。
何もかもを写せるわけではない、オモチャのカメラが、この場所の本質だけを写しだしていました。

 

吉田 さや子さま
西新フォトツアーvol.2

西新フォトツアーvol.2

吉田さんは唯一、フィルムカメラでの参加でした。
工場で機械的に造るのと違い、一つ一つ手作業で生み出される高取焼。
そのアナログさでしかできない「何か」があるので脈々と引き継がれていくのでしょう。
建築も同じで、これだけ技術が進化しても和室や茶室というものが無くなることはないでしょう。
コンクリートや鉄ではつくることのできない空間性があり、それの大切さを分かる人が必ずいるからです。
吉田さんのフィルムカメラへのこだわりは、高取焼窯元の撮影に合っている気がしました。