長く沈黙したカメラに命を吹き込むのは、カメラへの愛と熟練の技術。
熊本市にあるカメラ修理店「ひさなが光機」は、フィルムカメラなどの機械式カメラを中心に修理を行う、知る人ぞ知る店だ。「フィルムカメラであれば、どんなものでも修理できないないものはないですね」。その言葉を裏付けするのは、創業が昭和26年という歴史とこれまでの実績。どこも取り扱っていないような古いカメラも、ひさなが光機に出せば動くようになって戻ってくる。「機械としての完成度の高さや、手に取った時のずっしりとした質感に惹かれますね。まるで工芸品のようでしょう。デジタルカメラはプラスチックのものばかりですから」。カメラ談義に花が咲くのもカメラをこよなく愛しているからこそ。しかし、近年のデジタルカメラの台頭で、昔に比べると圧倒的にフィルムカメラを使う人は減ったという。「幸い今はインターネットというツールがあるので、全国から修理の依頼があります。どこからも突き返されたというカメラを受け付けて、お礼の言葉をもらったこともありました」。フィルムカメラを愛する人たちの、とっておきの愛機が集まるひさなが光機。これから命を吹き返すだろうカメラの、カシャッという軽快なシャッター音が聞こえたような気がした。
ひさなが光機の鶴さん(右)と中村さん(左)。
日本のカメラはここから始まっていた。創業者が制作に関わった、「リトレック」の前身「レンブラント」は必見の価値あり。
全国から珍しいカメラが集まる。日本に1〜2台しかないカメラを修理し、後から気付いたこともあるとか。
修理歴10年以上の中村さんの腕でみるみるうちに分解されていくカメラ。修理できないものはないという頼もしさ。
使い込まれた道具が並ぶ工房。
店に入った横のショーケースにはクラシックカメラが飾られている。カメラファンの心をくすぐる。
Profile
- ひさなが光機(ひさながこうき)
- フィルムカメラ全般からデジタルカメラまで幅広く修理を行っているカメラ修理店。メーカーでも修理ができないクラシックカメラも取り扱っている。
問/096-364-3517 住/熊本市大江 3-8-35 http://www.hisanaga.jp/
写真=石川博己 文=原口昌子