Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2013.1.10

kurume kasuri textile ②

久留米絣/HIHAKU
オリジナルテキスタイル。

 「飛白」それは久留米絣の創始者、井上伝が初めて作った絣柄だと言われています。その読み方は「ひはく」そして「かすり」。久留米絣の原点であるその名をとり、エフ・ディプロダクツは久留米絣を用いたプロダクトブランドを発表します。

オリジナルのテキスタイルを作る。

 プロダクトを立ち上げるにあたり、私たちはHIHAKUオリジナルの久留米絣を制作しました。ブランドのイメージカラーは、濃紺。古くから日本人に馴染んだ色であり、魔除けともされていた藍染めの色です。青から濃紺のグラデーションで奥行きを出し、浮世絵の夜空のように仕上げました。
 柄については、シンプルでありながらも線の太さや間隔の違いで何通りものパターンができる、縞柄をデザイン。日本では昔から“棒縞”や“子持縞”、不規則に並んだ“やたら縞”や、波打つような“よろけ縞”などいくつものパターンが作られています。流行柄や男女別の柄、身分によっても分類がなされ、時流をうつす鏡でもありました。 
 日本人ならではの繊細な表現力と感性、潔さ。シンプルでベーシックながらも、組み合わせ次第でモダンにもシックにもなる色と柄。人それぞれに幾通りもの可能性を秘めた、HIHAKUのテキスタイルが完成しました。

信頼のできる職人がいるということ。

 テキスタイルの制作に協力してくれたのは、福岡県筑後市の久保織物工房、久保竜二さん。
「3ヶ月かかる久留米絣の作業工程を、一日でひと通り取材させて下さい」という、私たちの無茶なお願いを聞き入れ、早朝から晩まで丁寧に説明をしてくれた方でもあります。
 20代の終わり、それまでの仕事を辞め3代目として久保織物工房を担うことを決めた久保さん。もっとも大切にしてきたのは“品質”だと語ります。
「受けた注文をどれだけ忠実に、高い品質をもって表現できるかが、ものづくりで1番大切なことだと思っています。自分たちは職人ですから」。

風合いを高めるため、経糸と緯糸の張力に差を出し生地に縮ませる“しじら織”という織り方で。

糊浸けした絣糸のねじれをとりながら、テンションをかけて干す。夏は乾きすぎるので注意が必要。

整経の段階から細かく糸数を計算。従業員にも誤解なく伝わるように細かな指示を忘れない。

緯糸はすでに染められた糸を使用。緯糸を染める手間を省き仕上がりまでの時間を短縮。

「試しに緯糸を変えてみたい」そんな声にも応えてくれる久保さん。緯糸が変わると全体の印象ががらりと変わる。

kurume kasuri textile「HIHAKU」久留米絣キモノ(参考商品)淡いグレーにサンドベージュが混ざった上品な色です。全体に織り込まれた乱菊文様は華やか過ぎず、清楚でやさしい雰囲気に。なめらかな曲線が所作まで美しく見せてくれそうな、大人かわいい1枚。

kurume kasuri textile「HIHAKU」久留米絣キモノ(参考商品)生地全体に細かな凹凸が見られる、特殊な織機で織られた“筑紫ゆうき”という反物のお着物。光沢のある糸を使用しているので高級感があり、アールデコ調の柄がレトロな雰囲気を醸し出しています。

kurume kasuri textile「HIHAKU」久留米絣キモノ(参考商品)筑紫ゆうきの反物で仕立てたお着物です。光沢のあるブルーと孔雀の羽のようなグラフィカルな柄がモダン。生産数の少ない希少な反物なので、周りとはひと味違う着こなしを楽しみたい方におすすめです。

一枚で幾重もの着こなしができる着物。洋服を選ぶように反物を選ぼう。

 昔から普段着の着物として親しまれてきた久留米絣。そうときたら、やはり本来の楽しみ方で絣を味わいたいもの。エフ・ディプロダクツでは、久留米絣の中でもポップでアンティークな香りがする反物をチョイスしています。久留米絣は着物に仕立てると柄がいっそう引き立ちます。素朴な柄からポップな柄と柄域も多く色数も豊富。帯や小物のコーディネートで幾重にも印象も変えられる着物は、1枚持っているだけで重宝します。洋服を選ぶように反物を選び、あなただけのコーディネートを楽しんでください。

菊の花びらを大胆に華やかに見せる乱菊文様。落ち着いた上品な色味。

孔雀の羽のようなモダンな柄。光沢がありハリのある生地。

不均一なボーダーと小さなドット。黒、薄緑、青緑の切り替えが手仕事ならではの緻密さを感じさせる。

ゴシック調の古代柄。先染めした糸の柄部分を脱色して織り上げる“脱色絣”で、さらにひと手間が加えられている。

伝統的な麻の葉文様。パターンの色味を部分的に強調し生地に変化を与える。

オーソドックスなあられ柄の全体に淡いドットを散りばめ、奥行きを出している。

写真=石川博己 文=柳田奈穂