Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2012.9.14

陶芸家=Atelier hibiki 古川響子さん




しなやかな感性が生み出す、陶器のアクセサリー。

 色とりどりのラインやドット、幾何学模様をあしらったブローチ。金属と見まがうようなリアルな重厚感の髪留め。陶芸家の古川さんが作るアクセサリーは、土という素材にとらわれない洗練されたデザインで見た人の心を掴む。大学で陶芸を学び、卒業後は自らのアトリエを構えた古川さん。器を中心に展示を重ね、次第に飲食店や引出物の注文も増えていった。「今は安くてシンプルな器が沢山あるので、作家ものの器に躊躇する方も多いんだと感じます。アクセサリーから陶器を身近に感じてもらい、器にも興味を持ってほしい」と、アクセサリーの制作を開始。アトリエには丸や四角のブローチ、髪留めやボタンなどが並び、そのデザインは一つひとつ異なる。「その方が選ぶ人も楽しいかなって考えながら作るのが楽しいんです」。ブローチは型を使わず手で成形したり、裏側まで釉薬をかけて光沢を出すため、焼成の際には細やかな処理を施すなど、作品への手間は惜しまない。「イメージを固定せず、旬なものやニーズに合わせて進化するものを作っていきたい。そのために感覚を磨いて、あとは自分にできることを楽しんでやるだけです」。古川さんのしなやかな精神に導かれるように、今日も新しい作品が生まれている。

自宅敷地内にあるアトリエ兼ショップ。窓からの光と黒い壁に、古川さんの作品が映える。

作品の表面だけでなく裏面にまで釉薬をかけるため、焼成の際にくっついてしまわないよう裏面に足をつける前の下準備。この一連の作業が細かくて大変なのだそう。

ショップ奥にある工房では、日々の制作だけでなく陶芸教室も行っている。古川さんの陶芸への想いがここから発信されている。

丸く成形した粘土を乾燥させ、カンナで表面を削り整えていく作業。サッサッと一見簡単そうに削る古川さんだが、実は一番時間がかかる工程なのだそう。

Profile

古川響子(ふるかわきょうこ)
幼い頃に訪れた窯元の穏やかな雰囲気に憧れ、陶芸家に。美大で技術を学びながらいくつかの工房をまわる内に「自分でやりたい」と感じ、フリーでの活動を開始した。2010年にはアトリエ&ショップ「Atelier hibiki」をオープン。日々制作に励み、個展も積極的に行なう。
住/福岡市城南区長尾3-26-22 問/090-8027-4686

写真=石川博己・高山弘之 文=木下綾