Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2015.11.1

Report: 視点採集「那珂川町」編

第4回目となる「視点採集」を2015年10月18日(日)に開催しました。

視点採集とは、身近な風景から自分らしい一枚を写し取り、
今まで気づかなかった見方や、新しい視点を蒐集していこうというフォトワークショップです。

なんとなくシャッターを切るのではなく、
自分なりに「どういう視点で撮るか」を決めて撮影していきます。

また、数多くの枚数を撮るのではなく、厳選して撮ることを心がけます。
目安としては、フィルムカメラの方はフィルム1〜2本分、デジタルカメラの方も40〜70枚くらい。

1枚1枚を大事に、考えて撮る。
そうすることが「自分らしい写真」を撮ることにつながると思うからです。

 

今回の採集エリアは那珂川町。
見どころが多く、またエリアも広いので、撮影ポイントを山間・田園・街中と3つに分け、
途中は車で移動しながら、撮影をしてきました。

豊かな自然に囲まれた山間地域。
のどかな田園の風景。
新幹線の車両基地があり、人の暮らしが垣間見える街並み…。

気持ちの良い青空が広がる、爽やかな秋晴れの一日に
果たしてどんな視点が採集できたのでしょうか。

 

講師を務めますのは、F_dの代表でアートディレクター・写真家の石川博己です。

今日一日のスケジュールは
①事前説明と自己紹介(博多南駅前ビルの会議室にて)
②撮影散策(約4時間)
③自由に昼食(フィルムカメラの方はその間に現像)
④写真をセレクト(撮影したものから10枚選択)
⑤発表(どういう視点で撮ったのか)
という流れで進みます。

今回の視点採集は「こととば那珂川」さんとのタイアップ企画。
参加者それぞれの視点で切り取った那珂川町の情景を、写真展でもお披露目できることになりました。
2015年11月14日(土)〜11月23日(月祝)に博多南駅前ビルの3階で開催する
写真展『那珂川町撮影さんぽ』。
11月15日にある「南畑美術散歩」というイベントと連動した写真展です。

そのため、視点は自由に決めていただくのですが
「那珂川町の魅力が伝わる写真」ということも意識して撮っていただきました。
いつもよりも少し、難しかったかもしれませんね。

 

まずは南面里地区へ。
朝の8時30分。
快晴の空のもと、美しい山並みに囲まれて、深呼吸したいくらいの清々しさです。

正應寺を待ち合わせ場所に、さっそく撮影開始。

講師の石川からの「〝小さい秋みつけた〟なんて安易なテーマは止めましょうね^^」という謎のプレッシャーを受けつつ、
各々の視点で切り取っていきます。

一人で写真を撮るのも良いですが、人と一緒に撮るのも楽しいものですよ。
カメラ仲間もできますし、何より、
挙動不審な撮影(見上げたり、覗き込んだり、しゃがみ込んだり、道路に這いつくばって撮ったり…)も、
皆でやれば怖くない。笑

続いては、不入道の滝へ。
ひんやりと涼しくて、神聖な空気に満ちていました。

お次は埋金地区へ。色んな作家さんの工房が集まっている場所です。
工房巡りをするのも楽しいところです。

朝早くから動くと、一日がとても長く感じますね。
まだ11時前ですが、すでに腹時計はお昼だと訴えています。
石窯のパン屋さんに寄って小腹を満たしてから、中ノ島公園へ。
夏には川遊びをしに沢山の人が訪れるそうです。
生産物直売所・かわせみの里でお買い物も楽しんだ後は、
田園風景が広がる、裂田溝(さくたのうなで)へと向かいます。

裂田溝は日本最古の用水路。あの『日本書紀』にも記されているとか。

歴史のロマンも感じつつ撮影を終えたら、博多南駅前へと戻りましょう。

街中の撮影と昼食を終え、再び博多南駅前ビルの会議室に集合。
撮ってきた写真の中から10枚をセレクトしていきます。

撮影しながら一日を一緒に過ごすので、今日初めて会った方とも自然と仲良くなります。
参加者の皆さんは写真好きの方ばかりなので、共通の話題で、会話も弾みます。

同じ大学の先輩・後輩だったことが判明した方もいらっしゃいました。
そんな偶然の出会いがあるのも楽しいですね。

それではいよいよ、皆さんに視点を発表していただきます。

プロジェクターで投影した写真を見ながら、
どんな視点で切り取ったのか、何をポイントとして撮ったのか、込められた意図は何なのか、
1枚1枚に対し、その方らしい言葉で語られていきます。

聞く方も真剣です。
まさか隣りで、そんなテーマを胸に秘めて撮影していたなんて!…と、
語られる視点に、思わず感嘆の声があがります。
そして、たびたび起こる爆笑の渦…。

視点採集のたびに思うのですが、同じ時間に同じ場所を巡ってきたはずなのに、
様々な視点で全く異なる写真が撮られていることに毎回驚いてしまいます。
そして、同一の被写体であっても、テーマや見方を変えて切り取ることができるという面白さ。
「これは人気のモチーフなのね」と分かって、興味深かったり…。

迷って苦心して、やっと定めた「自分の視点」。
枚数が制限されている中で「よし、撮ろう!」と決めて切り取ったその一枚に、どんな想いを込めたのか。
皆さんの発表を聞くことは、本当に勉強になりますし、良い刺激にもなります。

ご参加いただいた皆さん、どうもありがとうございました!

 

それでは、皆さんの採集されたコレクション(写真と視点)をご紹介いたしましょう。

 

視点採集コレクション紹介

【1】H.Mさん 男性(Nikon D700 /digital)

〈H.Mさんの視点〉

引っ越し先を探しており、那珂川町を候補地として半分本気で考えています。
子どもが2人いて、博多駅前で仕事をしている僕が「引っ越し候補地を見に来た」という視点で、
これは住むのに魅力的だなと思ったところを切り取り、10枚セレクトしました。

博多までわずか9分・300円で新幹線に乗れるという点が、かなり魅力的だと思いました。
夢の新幹線通勤が可能です。新幹線、かっこいいですね。

南面里地区で撮りました。すごく見晴らしが良かったです。
ここに住むのは、通勤等を考えると、正直ちょっと厳しいかなと思ったのですが、とてもいい場所だなと思いました。
花や虫たちと共に、季節感たっぷりの暮らしが送れそうです。

あんぱんが美味しくて、とても洒落たお店だったので、また行きたいと思いました。
美味しいパン屋さんがあるというのも、住みたいと思う理由の一つになりますね。

いま住んでいるところは待機児童が多くて、我が家も待機になるところでした。
これを見て「ちゃんと募集している。大丈夫だ。」と思いました。

これは中ノ島公園で撮った川で、水がとても綺麗でした。
水遊びが好きな子どもたちも大喜びしそうです。

もしも博多南駅周辺に住んだとしたら、車で10分くらいで、のどかな風景に出会えるので良いなぁと思いました。
僕の実家は朝倉市で、同じような景色が広がっているので、ノスタルジーで胸がいっぱいになります。

仕事で帰りが遅いので、駅のすぐ側に24時間営業のスーパーがあるのは、かなりの高得点です。

公園で子ども達が元気に仲良く遊んでいる姿を見かけました。僕の子どもも仲間に入れてほしいなと思いました。

歩道がとても広くて、子どもを連れて歩くのには、安心で嬉しいポイントだと思います。こちらも高得点です。

全体的に、街がとても綺麗だなと思いました。
ゴミや空き缶などもあまり落ちておらず、治安の良さそうなイメージで高得点でした。

〈H.Mさんの感想〉

とても楽しい一日でした。
これだけの人数がいても、同じテーマの方もおらず、
同じ場所を歩いていたのに、ほとんど異なる写真を撮っていたのが面白いなぁと思いました。
普段、自分では考えつかないようなテーマ・視点に触れられるので、視点採集に参加する度に勉強になるなぁと感じます。
あまり考えずにバシバシ撮るタイプなので、皆さんがすごく考えながら撮られている姿を見て、
自分も撮る前に一度よく考えて撮ってみようと思いました。
ありがとうございました。

〈石川の講評〉

H.Mさんはよくエフ・ディの写真イベントに参加してくれる写真上級者さんだけあって、
構図や光の捉え方はもう言うことないですね。
それに今回のような〝一家の大黒柱〟的な視点で那珂川町を切り取れば
こんな写真になるのかと、一同を「おおっ」とうならせる作品になりました。
園児募集のチラシを撮るなんて普通ないですよね。
24時間のスーパーや広い歩道の写真も、この視点ならではで、
本当に素敵な写真だなと思います。
H.Mさん、住みましょうかね^^ 那珂川町に。

 

【2】K.Mさん 女性(Nikon1 V3 /digital)

〈K.Mさんの視点〉

社会人になって最初の赴任地だった四国の徳島県にも、
那珂川と漢字一文字違いの那賀川(なかがわ)という川があり、
私にとっては「なかがわ」といえばそちらでした。
当時からもう一つの「なかがわ(那珂川)」が存在することは知っていましたが、
このたび那珂川町の写真を撮ることになって、「ああ、ここにあったのか」と知ることができました。
さらに、その「なかがわ(那珂川)」の名前を町名にしているというインパクトが強く、
流れる川のイメージから、「流れ」をテーマに撮ることにしました。

木の幹の影が川の支流みたいになっていたので撮りました。
影の繰り返しも「流れ」を表しているように感じました。
後ろの黄色い花が見えているところも気に入っているポイントです。

皆さんがお堂を撮っている中、
一人外れて道路脇の細い「流れ」を辿っていくと、光を受けてきらきらしている小さな沢がありました。
蜘蛛の巣を払いつつ苔の上を歩いていって撮りました。

2枚目の写真と同じ場所で、流れてきた水が浅く広がっているところに栗が落ちていました。
一瞬「海の中にウニ!?」と見誤ってしまいそうな写真ですが、森の中です。

お堂の近くに水道のようなものがあり、水が白く光る部分を目立たせることで、
左上から流れてきて石の中に溜まり、さらに右に流れ落ちていく様子を撮りました。

2本そろって不思議な形に折れ曲がりながらも生きている植物に、
「流れを止められたけれど、折れ曲がってでも流れたい方向に流れる」という意思を感じて撮りました。

光を受けてきらきらした水の流れと、その流れの中に見える葉っぱ、
水の中から咲いているように見える花が美しくて撮りました。

中ノ島公園の川で。水の「かたまり」のようでもあり、石の結晶のようにも見えて、
きれいだなと思って撮りました。

稲と稲の間にある緑色の部分が、山のほうから流れてくる川のように見えて撮りました。
また、稲穂の連なりも「流れ」を表しているなと思いました。

丸く切り取られた空間から階段が出ている様子が、
まるで水が穴からポタッとたれてくるかのように見えたので撮りました。

高架下に水の流れた跡があったので、これも「流れ」だと思って撮りました。

〈K.Mさんの感想〉

自分ではなかなか思いつかないような視点を皆さんが発見されていて、
話を聞くことで、その人独自の「世界の見え方」を自分も手に入れることができた気がします。
色々な「世界の見え方」が自分の中に蓄積されていくことで、
自分がいるこの世界を今までの何倍も楽しめるようになると感じました。
是非また視点採集に参加したいと思いました。ありがとうございました。

〈石川の講評〉

K.Mさんもよくイベントに参加してくれる写真上級者さんです。
K.Mさんらしい陰影の効いた写真で、自分の色を持っているなぁと思います。
木の幹の影を流れに見立てた一枚は、レンズの画角と相まって広がりのある構図になっています。
モノクロームな雰囲気の中、セイタカアワダチソウの黄色がポイントになっていて素敵です。
中ノ島公園の一枚も、同じようにモノクロームな中に黄色が効いていて好きです。
そして、これら「流れ」という視点の写真が見事に那珂川町の魅力を表しているので、さすがだなーと思いました。
(水平もきっちりあってるし!)ほんとうまいですよ!

 

【3】Y.Tさん 女性(Canon 70D /digital)

〈Y.Tさんの視点〉

初めて訪れた町だったので、何もかもが楽しく、キョロキョロと眺めている観光客の視点で撮りました。

畑を耕しているトラクターの赤がまわりの緑に映えていて、それを写そうと一生懸命に近付いて撮ってきました。

すごく蜘蛛が大きくて、目を引いたので。蜘蛛の糸をもう少し撮りたかったのですが…。

蔵の上の鏝絵が面白かったので、近くで撮りました。

埋金地区にある工房で、犬が一生懸命に見ている姿が愛らしくて。
背景の山なみも写して、こういうところに住んでいるんだなぁというのが分かるようにしました。

子ども達が遊んでいて、すごく可愛かったので。光のキラキラ感もとても綺麗でした。

何と書いてあるのかは分からなかったのですが、興味がわいたので撮ってみました。

お散歩中のご夫婦の後ろ姿が、すごく素敵だなぁと思って撮りました。

今から新幹線に乗りにいく家族の姿がとても素敵で。

一方、こちらは新幹線に乗って帰ってきた家族の姿を撮りました。

那珂川町は、新幹線も通ってるけど、空港も近いんだ…。

〈Y.Tさんの感想〉

日頃、カメラを持ってウロウロしながら風景を撮る機会が無いので、
晴天のもとで皆さんと一緒に撮影ができて、すごく楽しかったです。
また参加したいなと思いました。ありがとうございました。

〈石川の講評〉

Y.Tさんの写真は素直にそこにいて「きれいだな」と思う一瞬を切り取ったということですね。
観光客として那珂川町の素敵な光景を写し取った一枚一枚。
田園の中の一本道を歩く老夫婦の写真はいいですね。ゆったりと人が生きている土地、という感じがします。
駅の通路で撮った家族の写真。上に書かれた「チャレンジ!人口5万人!」は那珂川町が掲げるスローガンです。
その下を元気に歩く子供。いい瞬間だと思います!(光の下というのもいい!)
那珂川町らしいですね!
駅ビルから見た花壇は、まるで花の噴水のよう。そこに人が入っているのも動きが出ていいです。
Y.Tさんの写真は少し右肩が上がり気味ですね。
スナップなので厳密に平行がとれていなくてもいいと思いますが、
田園の写真は平行がバチッと効いていた方がいいと思いました。

 

【4】T.Iさん 女性(OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II /digital)

〈T.Iさんの視点〉

私は那珂川町に住んでおり、普段よく見ている場所なので、当たり前の風景になってしまっていて、
テーマを決めるのは難しかったのですが、「生きている感じ」を見つけたいなと思い、撮ってきました。

「虫食ってるな。」という写真です。

「けなげだな。一人でも頑張ってるな。」

神聖な感じで、営みを残しておきたいと思いました。

とても素敵な笑顔だったので、一枚撮らせていただきました。「生きてあるなー」と。

「人が積んだなー」という痕跡にグッときました。

とても良い子たちです。良く育っています。

後ろ姿に惹かれて。とっても良いなーと思って撮りました。

公園で子ども達が遊んでいるところを、声をかけて撮りました。
男の子が張り切ってジャンプしてくれました。

やっぱり子ども達はたまらないです。ぐっときます。

「新幹線があるのが那珂川町だな」という思いがあって。
写ってはいませんが、新幹線の中にも人の営みが詰まっているなと思います。

〈T.Iさんの感想〉

日頃は一人で黙々と作業をしていることが多いので、
こうして皆さんの写真を見ながらお話しするのは、とても楽しかったです。
私は「人間が好きだな」と思いました。
テーマを考えて撮ることは難しく、苦しみもありましたが、
時々はこのような経験もしながら歳を重ねていきたいなと思います。

〈石川の講評〉

T.Iさんの「生きている感じ」を見つけたいという視点。
草や虫や人が〝生きて、そこにある〟那珂川町の光景。面白いですね。
普段そこに住んでる人として、あえてその場所を切り取る(視点)というのは難しかっただろうなぁと思います。
見慣れてしまうと、新しいことや感動を発見しにくくなりますからね。
その中でよくこの視点を思いついたなぁと感心しました。
それと、T.Iさんの人柄を知っているので(笑)なるほど、T.Iさんらしいなぁと笑ってしまいました。
(この辺はかなり内々の感想なので、わかりづらくてすみません。)
「けなげだな。一人でも頑張ってるな。」
T.Iさん、がんばって生きていこうね!

 

【5】T.Kさん 男性(Canon EOS 6D /digital)

〈T.Kさんの視点〉

僕は建築を学んでいる学生で、建築写真家を目指しています。
最初に写真に興味を持ち始めたのは中学2年生の頃で、部活を終えてクタクタになって帰っている時に、
帰り道の高台で「ああ、空が綺麗だなぁ。写真に撮りたいな。」と思ったのが最初でした。
初心に戻って、自分が最初に写真に興味を持ったキッカケである「空」をテーマとして撮ることにしました。

南面里地区で。空が本当に綺麗で撮りました。

木漏れ日がとても綺麗だったので。
よく晴れたお天気だったからこそ、ここまで美しい光を撮ることができました。

空も綺麗だったのですが、人が作ったものと、自然に生えてきたもののバランスがすごく良いと思って撮りました。

水面に映る空がとても綺麗だったので。あえて手前を少し暗くして撮ってみました。

ブルーのメッシュがあったので、空を背景に撮ることで、青を強調して撮りました。

山と空とが写ったカーブミラー。

建築写真家を目指しているので、きちんと撮ろうと思って撮りました。
建物の上部の曲線が綺麗だなと思います。

青い空にビルがとても映えていました。

博多南駅前ビルの屋上から撮りました。
なかなか向こう側を見ることは無いのではないかと思い、撮りました。

こちらも博多南駅前ビルの屋上から撮りました。
何気なく撮った一枚でしたが、気に入っている一枚です。

〈T.Kさんの感想〉

写真を始めた時のことをお話しさせてもらいましたが、ずっと写真を続けてきて、
最近は特に、きっちりと構図を決めて三脚を立て、しっかりと時間をかけて一人で黙々と写真を撮ることが多かったので、
誰かと街を歩きながら写真をパシャパシャ撮るといった機会は、なかなかありませんでした。
昔はそんな風に楽しんで写真を撮っていたなぁということが思い出せて、今日はすごく良かったです。
今回、建築写真を意識して、綺麗に合わせて撮ったものもありますが、
写真の醍醐味はやはり、色んな視点があることだと再認識しました。
自分の技術を上げることばかりに集中していたので、改めて視点の面白さを感じられて楽しかったです。
ありがとうございました。

〈石川の講評〉

僕の欲しいレンズを20代前半にしていっぱい持っているT.Kさん。
「最近これを買ったんですよ」と出してきたレンズ。50mmのマクロプラナーだとぉ!!
眉間にしわが寄ってしまいましたが、よだれを垂らして近づいて貸してもらいました。
ものすごくいい描写のレンズで、撮影そっちのけでベタベタ触りまくってしまいました。
で、講評なんですが、建築写真家を目指しているT.Kさんらしく、ビシッとした写真です。
光の捉え方や構図も言うことないですね。撮り慣れてるなぁと思います。
しかし…このレンズの描写は…すばらしい…。
…あ、いや、講評ですね。
写真に興味を持ち始めた中学生の頃、ふと見上げた空がきれいで、
それを撮りたいという(カメラを始めた)気持ちに立ち返って、那珂川町の空を撮った写真。
この日の天気はT.Kさんの視点に一番微笑みましたね。最高の空ですね!
〝青い空〟の延長でブルーのメッシュの写真が入ってくるあたり、憎いですね。
これもマクロプラナーの描写…いや、視点が効いてますね。
山と空が写ったカーブミラーの写真。きれいにラインが繋がっているのがいいですね。
建築写真家を目指しているT.Kさんらしい、きれいな駅ビルの写真もすごくいいですね。
この辺の写真はぜひ今後の那珂川町の広報活動でも公式に使ってほしい写真ですね。(ギャラはないけど^^;)
それにしてもマク…いや、視点がすばらしい写真でした。

 

【6】M.Nさん 女性(Canon Kiss x4 /digital)

〈M.Nさんの視点〉

自然の中にある「電線」に注目して撮ってみました。
那珂川といえば、自然が豊富というイメージです。しかし、駅周辺は生活圏内で人工物もたくさんあります。
そうした風景を見ていくなかで、電気というもののおかげで人が便利に生活できているのだなと改めて実感しました。
普段、写真を撮っている時は「邪魔だな」と感じる電線ですが、電気の恩恵に感謝し、
今回はあえて、電線を入れて撮ってみようと思いました。

自然の中に、送電線がたくさんある風景。

枝に残った一つの柿と、電線と、人の暮らし。

中ノ島公園で、手前には綺麗なコスモスが、遠くに鉄塔が見えています。

こちらも中ノ島公園にて。自然の中に溶け込むように建っている鉄塔が印象的でした。

4枚目と同じ橋から山側を見た風景。自分でも好きな景色です。

蛍の名所でもあるので入れてみました。遠くに小さく、携帯の電波塔(?)が見えています。

普段だったら邪魔だと思ってしまう電線も、これがなければ生活が成り立たないものなので、あえて入れて撮りました。

裂田溝にて。遠くにいくつもの鉄塔と電線が見えています。

街中の公園にも、当然、電線は通っています。

街の中にも、こんな風に自然は残っているよと教えてあげたいなと思いました。

〈M.Nさんの感想〉

以前に参加した視点採集(箱崎編)に続き、本日も試練の一日でした(笑)。とても勉強になりました。
また懲りずに参加したいと思います。宜しくお願い致します。ありがとうございました。

〈石川の講評〉

M.Nさんの視点はあえて電線を入れるというもの。なかなか考えつかない視点です。
普段、風景写真を撮る時はほぼ必ずと言っていいほど、電線は避けたくなりますよね。
しかし、それは電気を運ぶもの。
電気なくして人の暮らしはないということを、感謝の意味を込めて切り取ったという写真でした。
あらためてそういう視点で見ると、この豊かな自然の中で快適に暮らしていけるというありがたさを
この写真たちは表しているんだなぁと感じました。
思わずデザイナーという職業柄、これは「電線のある風景」というテーマで
九電さんが冊子を作らせてくれないかなと考えたりして…。
どの写真も那珂川町の豊かな自然と人の暮らしを写し取っています。
裂田溝で撮った写真はいいですね。センターラインの黄色が画を締めていますね。(水平だったらもっといいです。)
僕は最後の縦位置の写真が一番好きです。ほんと、なにもない普通の光景ですが、その街の素顔が写っているようです。

 

【7】S.Yさん 男性(Canon EOS 650 /film)

〈S.Yさんの視点〉

「那珂川町だということがわかる写真」という視点で撮りました。

新幹線の駅を写すことで、那珂川町らしさを撮ってみました。

バスのカラーリングだけでも「那珂川町」ということが分かるという点がすごいなぁと思いました。

裂田神社で、投げて鳥居の上に乗せるために積んである石だと聞いて。
自分もやってみましたが、なかなか乗せられませんでした。

裂田神社の内部。奉納してある絵が素晴らしいなと思って撮りました。

裂田神社の鳥居中央の扁額。くぼみの所に金色に塗られてあった名残を見つけました。

埋金地区には工房がたくさんあるということで撮らせていただきました。

那珂川の山々の景色が一望できるお寺。

同じく正應寺の鐘です。

Report: 視点採集「那珂川町」編

那珂川といえば新幹線の車両基地がある場所だということで撮りました。

Report: 視点採集「那珂川町」編

カンセンジャーが好きなので撮らせていただきました。

〈S.Yさんの感想〉

今日はどうもありがとうございました。皆さんの視点を見ることはとても楽しくてたまりませんでした。
撮って撮って撮りまくっていくと、自分でも意識していなかったものが
自分の中に入ってきていることに気付くこともありました。
これからも頑張って撮りたいと思います。

〈石川の講評〉

S.Yさんはフィルムカメラで参加。やはり他とトーンが違いますね。フィルムいいですねー。
「那珂川町だということがわかる写真」という視点。素直です!笑
S.Yさんが本当に素直ですもんね。人柄が写真に出ますね。
確かにどれも那珂川町というのがわかる写真ですね。
今回(他の参加者の方たちが)撮りたくても、ううっ撮れないという直球の構図もありますが
「那珂川町だということがわかる写真」という視点でオールクリアです!笑
でも、構図も描写も素敵ですよ!フィルムで撮るあたりも、普通の写真じゃないトーンに引き上げています。
最後の「カンセンジャーが好きなので…」という新幹線の写真もS.Yさんらしい一枚でした。
うん、いい!

 

【8】S.Tさん 男性(FUJIFILM X20 /digital)

〈S.Tさんの視点〉

今日は宮崎県から来ました。
自分は土木の人間なのですが、土木で計画を立てたり設計をしたりする時に、僕がいつも拠り所にしていたもの。
それは「目線として僕はこういう風に見ていますよ、皆さんはどうですか?」という問い掛け。
そして「ああ、あなたの目には、そういう風に映っているんですね。」という理解。
まさにこの、視点採集のようなことをずっと拠り所としてやってきました。
そうした中で、いつも思ってきたのが「こういうことやりましょう!」と言っても、なかなか動けないけれど、
どんなにダメな状況でも、それでも「やっていること」「思わずやってしまうこと」をとっかかりにしようと。
そういう視点で見ながら「こういうところがあるから大丈夫だ、ここからはじめられる。」と思うところを
写真に収めました。

畦を管理しているところです。
草は無限に生えてきますし、全体を見てしまうと「あそこまでやるのかぁ」とウンザリしてしまいます。
だからこそ、毎日コツコツとやっている。

不入道の滝にて。昔はもっと険しい道だったと思います。
それでも「行きたい」という思いから、整備されて歩きやすくなった石段。

神社の社のそばで、立派な木が生えていたのだと思います。
現在は切られてしまっていますが、昔から知っている人には、今なお、立派な姿が見えているのでしょう。

鳥や獣に食べられたりといった被害があるのでしょう。 フェンスやネットに囲まれた姿は決して美しくはありません。
しかし、そこには「作物をつくりたい」という思い、意志があります。

木工の工房にあった、犬用のケージ。
どんなに立派なものでも、犬はやっぱり噛んでしまいます。
噛んで壊れていくのだけれど、その様が愛おしかったり、過ごしてきた日々を思い出したり。

1600年以上の永い年月にわたり使い続けられている裂田溝。
修繕や整備がなされ、形としては新しいものもあったりと様々です。
それでも「ここを歩こう」という思いから、記録を、歴史をつなぐように遊歩道がつくられています。

裂田神社の裏の林。
管理も難しいのですが、やはり「残そう」という思いがあるから、大変でも残されています。

「払うんです。」
田んぼと畦に広がる草。

「それでも那珂川には新幹線がある。」
清掃の方です。きっと、ちょっとした責任者の方だと思います。「新幹線があるから、この仕事がある。」

こちらも駅の構内の清掃風景。「やっていくこと」という拠り所。

〈S.Tさんの感想〉

皆さんの発表を聞いていて、
「その人の見ているもの」「その人が見ようとしているもの」が、語られる言葉とともに染み渡ってきて、
感心するとともに、「そりゃ誤解も不理解も当たり前に存在するよな」と少し優しくなれた気がしました。
「誰かの目が届いているかもしれない」というのは、もっと色んなところで感じていいことかもしれないな、と思いました。あたたかい意味で。
どうも、ありがとうございました。

〈石川の講評〉

S.Tさんは今回一番遠くからの、なんと宮崎からの参加!
はるばる遠くからありがとうございます!
うちで以前働いていたスタッフが宮崎出身で、今は帰郷して三児の母になっていて…と、そんなことはいいとして講評です。
S.Tさんの視点も今回驚かされた視点のひとつでした。
その職業の人には世の中はこういう風に見えるんだと、気づかされた写真でした。
畦を刈り取っているおじさんの写真。ただ、いい感じだからといって撮る人はたくさんいるでしょう。
でも、その風景を「毎日コツコツとやることによって、この田んぼがあり、この景色があるんだ」というように切り取ると
それはすばらしい人の営みとありがたさを感じる一枚になります。(はっ!ここにも電線が…。)
S.Tさんの視点は〝見えないものを見る〟視点とも言えると思います。
そう言われると…と気づく、人の気配、想い、何かの意図や痕跡を感じる写真です。
深いなぁ…と食い入って説明を聞いてしまいました。
すばらしい視点採集でした。勉強になりました。

 

【9】H.Tさん 男性(Canon EOS 1Ds MarkIII /digital)

〈H.Tさんの視点〉

「リフレイン(繰り返し)」をテーマに撮りました。

綺麗に並んだ葉。

割れた瓦が綺麗に並べられたもの。

繰り返し並ぶ、石の柱。そして、それに生えている小さな丸い葉も、きれいに並んでいます。

こちらはちゃんとお賽銭を納めて撮らせていただきました。

橋の欄干のモチーフのデザインが良かったので。

逆光で光が抜けて、色がとても綺麗でした。

石畳のところに樹の影が落ちていました。色々な形の石が繰り返し敷き詰められています。

逆光で、金色の美しい色が出ていたので撮りました。
強調するために、ススキの穂のところだけをあえて撮ってみました。

川のところの石垣です。上から撮ったので、自分の影も写り込んでいます。

丸い光の繰り返しです。

〈H.Tさんの感想〉

今日はありがとうございました。
皆さんの視点を勉強させていただきました。良い写真が撮れるよう、これからも精進したいと思います。

〈石川の講評〉

丁寧な語り口が印象的なH.Tさん。久留米から来てくださいました。
H.Tさんの視点は「リフレイン(繰り返し)」。反復しているようなモチーフや光景を切り取っています。
並ぶ、積み重ねていく、まさにリフレインのモチーフ。絵画的な視点とも言えますね。
石畳の上に伸びる樹の影が、絵のような一枚ですね。
川のところの石垣も、一瞬何が写っているのかわかりませんでしたが、美しいと思いました。
光の陰影もドラマチックで素敵です。
よくリフレインになっているものを切り取りましたね。
最後に駅ビルもちゃんとおさえてくれました。なるほど!

 

【10】K.Sさん 女性(Nikon D3100 /digital)

〈K.Sさんの視点〉

私は美術大学に行き、美術を齧っていたので、今まで写真は「作品」というよりも、
作品に使うための「素材」という感じで撮っていました。
今回は一枚の絵になるように、構図などを考えて撮りました。
視点は「隙間(すきま)・間(あいだ)」です。

木のくぼみの隙間に葉っぱが刺さっているなぁと思って撮りました。

田んぼの隙間に、ハート型の葉っぱがあるのを見つけて、面白いなと思いました。

葉っぱの間からチラチラ見えている形が面白くて撮りました。

黄色い花と紫色の花の間が糸で引っ張られているようで面白いと。

隙間に窮屈そうに挟まっている椅子がなんだか可哀想だなと思って。

石の隙間から流れ出る水。

タンポポの綿毛と綿毛の間が絶妙な距離だなと。

ゴミ袋と、その隙間から見える田んぼが良いなと思って撮りました。

街中で、隙間からのフェンスを撮ってみたら綺麗でした。

木と木の隙間から男の子を。

〈K.Sさんの感想〉

今日はありがとうございました。
私は友達と出掛けても「一緒に写真を撮ろうよ!」というようなことをしない質で、
写真は作品のためにあるものだと最近は考えていたのですが、
このように皆さんと写真を共有し、人が写っている写真にホッコリするという気持ちを味わって、
写真って「人と人との繋がり」のために大事なポジションにあるんだなと改めて感じました。
私は以前いた場所が田舎すぎてイヤだと思って福岡に戻ってきたのですが、
今回、那珂川町という場所を巡って、自然の美しさに気付き、
前にいた場所でも、写真を撮ったりして、もっと自然などを味わえば良かったなと思いました。

〈石川の講評〉

K.Sさん視点は「隙間(すきま)・間(あいだ)」。H.Tさんの視点「リフレイン(繰り返し)」に近い感じですね。
一枚の絵になるようにと、絵画のように撮った写真ということです。
K.Sさんの感性も独特で、この写真をどう見たらいいのか…と格闘しました。
だいたい僕はわかりやすい写真が好きなので、現代美術的なものは苦手でどう見ていいのかわかりません。
わからないながらも、首をくねくね曲げながら近寄ったり引いたりして見るわけですが
そうしていると、最後には好き勝手な自分解釈になるわけです。
そういう感じでこれらの写真を見ると、隙間から見えるものは少ない領域なわけで
そこから見える少ない情報は、見えない部分を想像させるんですね。
言い換えれば、隠しているものは邪魔なわけで、それがなかったらどんな風景が広がっているんだろう…と
書いているうちにこれはストリップのようなものだなと、笑。
前のめりしたくなる衝動にかられる写真ですね!

 

【11】N.Kさん 女性(Canon kiss X7i /digital)

〈N.Kさんの視点〉

2年ほど前に一眼レフカメラを始めました。
もともと大学で映像の勉強をしていて、動くものを撮っていたのですが、
自分の撮る映像は説明的すぎて面白くないなと思っていた時に、
食についての雑誌『PERMANENT つくる、たべる、かんがえる』の写真家さんが写真の視点で撮った動画に感動して
「私も一眼レフカメラで動画を撮ってみよう」と思ったことがキッカケでした。
いつの間にか写真ばかり撮っていましたが…。
視点については、私がバイクのライダーなので、ライダーの皆さんに「いい道ありますよ」と教えてあげられるよう、
「道」をテーマに撮りました。

良いカーブがあって、うーんと腕を伸ばした姿が気持ち良さそうで、そんな清々しさが伝わるかなと思って撮りました。

こちらも「良いカーブがありますよ」ということで、カーブミラーに映った道を。
「ライダーの皆さん、ここでカーブを堪能してください。」

道がテーマなので、水路も水の道だなと思い、直線を意識して撮りました。

坂が綺麗だなと思ったのと、スカートのピンク色が綺麗でパチリと一枚。

ライダーにとっての恐怖である、落ち葉。「良いカーブですが、気をつけてくださいね。」

蜘蛛の巣を撮っていたら、向こうに良いスポーツカーがたくさん通っていたので。
虫の道と、車の道が重なって綺麗だなと思いました。

皆さんの靴がお洒落だったので。
今日のような道を歩く時は、ヒールよりも、こうしたズックの方が良いですね。

お尻がとてもステキで…。自転車乗りの皆さんにもオススメの道です。

学校の帰り道。まるで3兄弟のように並んで。懐かしい気持ちがわいてきました。

猫の道です。

〈N.Kさんの感想〉

今まで写真を撮る時、私は「下手だから数で勝負しなければならない」と思っていました。
1回に撮る量も、今日くらいの撮影であれば500〜600枚くらいは当たり前。
しかし、視点採集では「いかに考えて少なく撮るか」が大事だということでしたので、
今日は100枚以上は撮らないと決めて、撮影に臨みました。
絞って絞って、それでも多いのでしょうが、なんとか80枚くらいに納めました。
少なく撮った分、意味合いとか、何を撮らないといけないのかをすごく考えることになり、
また皆さんの視点を聞いて、「そういう考え方があるんだ」と勉強になりました。
撮影に際し、考えることって大事だなと気付くことができました。ありがとうございました。

〈石川の講評〉

N.Kさんの写真の視点は、ライダーというN.Kさんらしく「道」。
道と絡めた那珂川町のいろんな景色を切り取っています。
人物が入っている構図で、人の頭の部分を切り取ってトリミングしているあたりはうまいなぁと思います。
写したい部分は道なので、人の頭が写ると見る人の視線が人に向いてしまいます。
下に視線をもっていかせるために必要な構図ですね。うまいと思います。
ローアングルから撮ったカーブの写真もかっこいいですね。
視点採集では猫は1カットまでというルールがあります。
今回切り札を使ったのはN.Kさんだけでした。笑

視点採集では当初、フィルムカメラのみのワークショップだったので、フィルム1本分という撮影枚数縛りがあったのですが
2回目以降はデジタルカメラの方も参加できるようにしたため、その縛りは無くなってしまいました。
それでも、後でセレクトする時に大変なので、なるべく2本分程度の72枚、
多くて100枚程度までにしてくださいとお伝えしています。
N.Kさんも今回はがんばって撮影枚数を絞ったとのこと。
それによって〝考えて撮る〟ということに気づけたとのことで、
これぞまさに視点採集のワークショップの目指している〝気づき〟です!

 

【12】アポロデザイン 植村さん 女性(SONY α6000 /digital)

〈植村さんの視点〉

テーマは「写るんです」。

「写るよー」と声をかけたら、上を向いてくれた犬です。

参加者の皆さんが一生懸命に写している姿が良いなぁと思って撮りました。

不入道の滝にて。私が好きだった風景です。
ここは滝修行ができるんですね。こんなに沢山の人が来るのかぁと思いつつ。

笑顔が良いなぁと思って。

(注記:スタッフを大量の蜘蛛の巣だらけにするというワナが上手くいって、してやったりという満面の笑みを浮かべた
講師の石川です。後ろでは悲鳴が上がっています。)

中ノ島公園の正しい使い方だなぁと思いました。二人でくつろぎながら、ウコンを飲んでいました。

タンポポの綿毛を撮る参加者の後ろ姿。その奥に見えるのは…。

那珂川町らしい風景だなぁと思うのですが、議員さんの看板をよく目にします。

イノシシの足跡を写している参加者。この写真を使うのかなぁと思っていましたが、使われていませんでした。

良い写真を撮られていたポイントです。

皆さんが中腰で写真を撮っている姿が、また良いなぁと思いました。

〈植村さんの感想〉

今日は会社のカメラを持ってきたのですが、「あれ?写らない!壊れた!」と思ったら、
レンズキャップをつけたままでした。
そのくらいのカメラの技術しか持っていないのですが、いいなと思える写真が撮れたので良かったです。
ありがとうございました。

〈石川の講評〉

今回、視点採集「那珂川町」編にご協力くださいましたアポロデザインの植村さんの写真です。
みんなの発表を見て、飛び入り参加してきました!うずうずしていたみたいです。
視点は「写るんです」…だとぉ…。そりゃあ…写るわね。さすがコピーライターっぽい視点ですね。
植村さん、私は写真うまくないんですよ、とおっしゃってましたが、いやいやうまいですよ!
素直な写真だなぁと思います。見守ってる感があります。聖母的な!笑
僕を撮ってる写真は余計でしたが、その瞬間、その場に、ふと(植村さんが)存在する気配がする写真です。
撮られている人より撮っている人を感じる写真でした。
今回は運転手までしてくださって、ありがとうございました。
これからはレンズキャップを外して撮ってくださいね。

 

【13】スタッフ林 女性(Nikon FM2 /film)

〈林の視点〉
いつもド近眼的に寄ったアップの写真が多いので、引いて撮ることを意識し、
「余白」という視点で撮ろうと思いました。
旅先から送るポストカードをつくるつもりで、余白に文字を入れられるように。
また、とても天気が良く、光が美しかったので、「陽だまり」もテーマとして撮ることにしました。

何ということもない風景かもしれませんが、光がとても綺麗で、自分ではとても好きな景色でした。
空の余白に「あたたかな光に満たされた南面里の風景」と入れたいなと。

木々の間から差し込む光が美しく、静謐な空気に満たされていました。
左下の暗いところに、白抜きで文字を入れたい感じです。
「木漏れ日と、光を透かした緑と、ひんやりと心地良い風と。」

波板の屋根に落ちたイチョウと光が良いなと思って撮りました。
黒く影になっているところに「不入道観世音寺で見つけた秋の光」と入れたいです。

不入道の滝の近くの森で。光と樹々のシルエットが厳かな雰囲気を醸し出していました。
右下の暗い影のところに「静かで神秘的な不入道の森にて」と。

川面に反射した光と、黄色とピンクの草花に、あたたかさを感じて。
「埋金地区を散策中に見つけた陽だまり」です。

埋金地区にある工房にて。
絡まるツタの形状に心惹かれました。まるで芸術作品のようだなと。
右下のスペースに「アートするツタ」。

同じく、埋金地区の工房で撮りました。
左側、緑の芝生の上に「那珂川町で工房巡りをしてきました」と入れようと思います。

裂田溝地区を散策中に見つけた、陽だまりに咲くタンポポの綿毛。
「儚く飛んでいくタンポポの綿毛と日本最古の用水路・裂田溝。時の流れに想いを馳せて。」

街中で切り取った一枚。
なんとなく幸福の象徴のように感じられる鐘。
小さく写った鐘と、どこまでも広く青い大空に明るい未来を感じて。
「那珂川町の駅前で、大きな空と希望を見つけてきました。」

今回の撮影さんぽの出発地点であり、到着地点でもあった博多南駅前ビル。
蜷川実花さんの写真をイメージして撮ってみました。
「那珂川町に行ってきました。」

〈林の感想〉

私もイチ参加者として、皆さんと一緒に撮影して参りました。
エフ・ディの写真関係のイベントでは、フィルムカメラでご参加の方がかなりいらっしゃるのですが、
今回は珍しく、Yさんと私の2人だけでした。

いつもながら、カメラを持つと周りのことが目に入らなくなってしまい、
撮影に没頭してしまう点を猛省しなければなりません。
いやー、カメラの魔力って、恐ろしいですね。
ううっ…皆さま、申し訳ございませんでしたっ!

〈石川の講評〉

次は視点採集のスタッフ林の写真です。
彼女もS.Yさんと同じくフィルムカメラでの参加。愛機Nikon FM2で撮っています。
カメラのキタムラさんの現像はいいですね!フィルムの持つナチュラルな色を崩さず仕上げてくれています。
現像がいいからというわけじゃなく、いい写真だと思います!
林はめきめき腕を上げてきているので、写真はやはり撮れば撮るほどうまくなるなぁと思います。
それも、ただ撮るのではなく〝考えて撮る〟ことが大事。
ちゃんと視点をもって被写体と向き合い、どこを切り取るのか、よく観察すること。
そうして撮っていくと、おのずと上達するものです。ほんとに。
今回の視点は「余白」。いい視点ですね。写真にコピーが入りそうです!
発表の時には言ってなかった、かっこいい言葉がこのレポートでは登場しているのがちょっと解せませんが
まぁ、いいです。確かにそれに近いことを言ってましたから。笑
意図したように一枚一枚それぞれの余白にコピーが入り、那珂川町のポストカードになるような、そんな素敵な写真です。
他の参加者と同じところを撮っているものもありますが、視点が違うと異なる写真に見えますね。
スタッフらしからぬ、みんなの誘導もそっちのけで撮られた写真、まぁいい感じです。
これらの写真をフィルム1本36枚できっちりおさえたというのも感心です!

 

【14】石川 博己 男性(Canon 5Dmark2 /digital)

大トリを務めますのは、講師の石川の写真です。

〈石川の視点〉

今回撮影した写真は、南畑美術散歩というイベントと連動した写真展に用いますので、
「美術的・アート的」な写真を撮りたいなと思いました。
ある写真家で、自分の庭で育てた花を毎日摘んでは大判カメラで撮り、アート作品として発表している人がいます。
身近なテーマでも、写真集や「作品」というレベルに昇華できるし、
特別な場所に行かなくても、綺麗なものを表現できるのが写真だなと思います。
そこで、ここ那珂川町で「美しいもの」を撮ってみよう、
その中に「那珂川町」というものがチラリと写っていれば素敵だなと思って撮影しました。

逆光的に撮った写真ですが、非常に美しい光だったので、コントラストも含めて好きで撮りました。

光の当たった葉がすごく綺麗で、この位の距離で撮影したものが好きなのもあり、撮った一枚です。

蜘蛛の巣です。女郎蜘蛛の良い網がいっぱいあったのですが、その中でも光が綺麗なところを狙って撮りました。

あえてピントを合わせずに、ちょっとボケさせて。
見る人の想像力を掻き立てるような写真を撮ってみようと思った一枚です。

色のコントラストが好きで、非常に美しいと思いました。

裂田溝にて。色がとても綺麗だったので、その色の印象だけが伝わるよう、ピントを合わせずにボケさせて。

空と赤い実とのコントラストが綺麗だったので撮りました。

ガラスを透過した光と、ブルーのタイルがとても綺麗だったので。

駅前の石のオブジェです。
本来は硬質なイメージのものを、明るめに飛ばして柔らかく撮ることで、
一瞬「これは何だろう?」というような感じにしてみました。
現代アートのような雰囲気になったのではないでしょうか。

かなりアンダー目に撮ることで、そこに光がぽんと浮いているような美しさを表現しました。

〈石川のコメント〉

こんにちは。石川です。

視点採集はある視点をもって「考えて撮る」ことをしようというワークショップです。
考えて撮るために、枚数を制限しています。

デジカメを手にするようになってから、ものすごい枚数の写真を撮るようになって、
気がついたら、どんな写真が良いのかと考えることもなく、何百枚もの写真を撮りながら
「どうしたらうまく撮れるんだろう?自分らしい写真が撮れるようになるんだろう?」というのが、
現代の写真を撮っている人の悩みだったりします。

僕は写真教室もやっていますが、すでに上手に写真も撮れるし、カメラにも詳しいのに、
それでも「自分らしい写真を撮りたい」という思いで来られる方がほとんどなのです。

今や、シャッターを押しさえすれば写るカメラですので、撮ること自体は難しくありません。
ただ、それが「自分らしい写真」かどうかは別問題です。

考えながら自分なりの目線で切り取ることが「その人らしさ」をつくっていくのではないか、
「考えて撮る」ということが写真の一番の上達の方法ではないかということで、
この視点採集のワークショップをやりはじめました。

さらに、このワークショップの良いところは「人の視点を見る」ことができる点です。
これは、実際にやる前に想像していた以上に、とても勉強になるものだとわかりました。
僕も毎回、参加者の皆さんの視点を聞きながら「うわー、そんな視点は自分の中に無かったな」と感心しています。

写真自体は、何も説明を受けずにパッと見れば「ただの風景写真だな」と思われるかもしれませんが、
セレクトされた10枚の写真の根底には一つの視点が貫かれており、一枚一枚に意味が込められています。
コメントを聞きながら写真を見、撮影者の視点でその情景を追体験していくことで、自分の中に新たな視点を獲得できます。
〝視点採集〟という言葉には、そういう意味も込められています。

皆さんの視点を聞いて「これから、そういう視点で撮ってみるのもアリだなぁ」と思われたものも
いくつもあったと思います。
これを機会に、自分なりに制限を設けて撮ることをやってみてはいかがでしょうか。
僕も、常にそういう制限を課して撮っているわけではありませんが、
フィルムで撮る時は、おのずとフィルムの枚数制限という中で、今日はどういうものを撮ろうかと考えて撮っています。
デジタルカメラだと枚数を意識せずに撮ってしまうので、制限をつけて撮ってみるのも面白いと思いますよ。

今回の視点採集は、那珂川町の駅ビルのプロモーションを行っている「こととば那珂川」さまの
ご支援とご協力によって開催されたワークショップで、さらに写真展まで開催できることとなりました。
これらの写真を銀塩プリントし、博多南駅前ビルの3階で11月14日(土)~23日(月・祝)まで展示いたします。

下見から当日まで何度も那珂川町を案内してくださった、こととば那珂川の福田さま、坂口さま、
当日、運転手をしてくださったアポロデザインの植村さま、鎌田さま、お世話になりました。ありがとうございました。
おかげさまで、天気にも恵まれ、すばらしい撮影会になりました。

長いレポート、最後までご覧くださいまして、ありがとうございました。
ぜひ写真展にもお越しください。よろしくお願い致します。

写真展『那珂川町撮影さんぽ』
2015年11月14日(土)~11月23日(月・祝)
10:00~17:00(14日・15日は~16:00まで)
場所/博多南駅前ビル3階・入場無料
お問い合わせ/こととば那珂川オフィス(http://cototoba.com