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2021.3.31

藤田鋳込所 |藤田伸一郎さん 3/4

新型コロナウイルス感染症が流行する前は、台湾や香港など、海外の方も見学や体験に来られていたそう。

「コロナが落ち着いたら、観光協会と組んで、ワークショップをやろうと考えています。
現在準備しているのは2種類。
石膏型はずっと使えるわけではなくて、だいたい100回くらいが限度。その使えなくなった型を利用した体験が一つ。
好きなように削って模様をつけてもらって、自分のオリジナルをつくります。

もう一つは、招き猫の絵付け体験。これはすぐに持ち帰ることができるのがポイント。
陶芸体験の場合、どうしても焼成が必要になるので、後で完成品を送ることになる。
そうなると、手元に届くまでに時間があいてしまうので、だんだんと感激が薄れるんですよ。
だから、その場で完結できるにはどうしたら良いかと考えて、編み出しました。
これなら1時間くらいで完成させることができる。そうすると、感動が全然違うんです。」

波佐見ポートレイト|藤田鋳込所・藤田伸一郎さん

通常、生地職人がユーザーと直接関わることはありません。
波佐見町の中でも、生地屋さんでワークショップなどを体験できるところは珍しいそうです。

藤田さんには、福岡の高校の陶芸部や、波佐見の中高の陶芸体験プログラムを指導されてきた経歴も。
教育の現場に携わったことは、人に教える際にも役立っています。

「体験に来られた人には、作り方だけじゃなく、文化的なことや背景についても話します。
例えば、この急須は取っ手を下にして置いても立つんですね。
こんな風にバランスが良いのは、良い急須ってこと。
注ぎ口と取っ手の角度は、90度ではなく、だいたい87度にしてあります。
その僅かな差で、お茶を注ぐ時、手首がスムーズに返しやすくなるんです。

また、お茶を淹れる時は、玉露・煎茶・ほうじ茶など、種類によってお湯の温度を変えましょう、という話も。
せっかく高い茶葉を買っても、ポットのお湯を直接入れたら、苦味や渋味がさしてしまう。
抽出温度で全く味が違ってくるので、そのために『湯冷まし』という道具があるんですよ、とかね。

生活をもっと豊かにするための知識も伝えていきたいんです。
そうすれば、魅力度も上がるし、そんな風に使ってみようかなって気にもなるでしょう。

コロナによって自宅で過ごす時間が増えて、暮らしの質を向上させたいと考えている人も多いと思う。
それじゃあ、作り手の声を一回聞いてみようかって、産地に来てもらえたら良いですよね。」