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2021.3.31

藤田鋳込所 |藤田伸一郎さん 2/4

波佐見焼の生地の製作方法はさまざまありますが、こちらで行っているのは「排泥鋳込み(はいでいいこみ)」という成形法。
花瓶や急須、土瓶のような、中が空洞になった袋状の器をつくるのに適した方法です。
石膏型の中に泥漿(でいしょう:液体状にした陶土)を流し込むと、水分が型に吸収されて徐々に固まります。
必要な厚みの層になったら、余分な泥漿を型から排出。
しばらく置いて、成形品を取り出します。
急須の注ぎ口・取っ手・茶漉しなどは、あらかじめ同じように成形しておき、泥漿を接着剤として本体に接合し、組み立てます。
この方法は「袋流し成形法」とも言い、波佐見地区が得意としているもの。
伝統的工芸品産業に指定された全国の陶磁器産地の中で、唯一部門として認定されています。

波佐見ポートレイト|藤田鋳込所・藤田伸一郎さん 波佐見ポートレイト|藤田鋳込所・藤田伸一郎さん 波佐見ポートレイト|藤田鋳込所・藤田伸一郎さん

「排泥鋳込みというのは、手仕事になるんです。
機械でやれば、同じ形のものが効率的にいくらでもつくれる。
でも、手作業でやる強みは、容易に形をいろいろ変えられること。
パーツをつけかえれば、急須からポットにしたり、土瓶にしたりできるんです。
そうやって一部を変化させることで、アイテム数を増やせるわけね。
新商品を考えるとき、さまざまにパーツを変えた試作品がすぐにできるから、素早く市場に出して反応を見ることも可能。
そういうスピード感が、機械で製造するのとは違うところですね。」

波佐見ポートレイト|藤田鋳込所・藤田伸一郎さん

パーツを本体に接着するタイミングを計るのも、とても難しそうです。
どのくらい固まったのか、ぎゅっと押してみて確かめるわけにもいきません。

「本体とパーツの収縮率が変わってしまうと焼き上がった時に割れてしまうので、それぞれの乾き具合を調整しないといけない。その管理がものすごく大事。
それから、土の作り方も重要です。
経験値も必要だし、天気にも左右される。
乾燥している日と雨の日、風の強さなどの違いを、肌感覚で常に自分の中に入れ込まないと。
一日として全く同じ条件というものはないから。
でも、毎日違うからこそ、面白いのかも。

昔の職人さんが『見て覚えろ』っていう、あの世界ですね。
口で説明しても、自分で感じないことには伝わらない。
この鋳込みの仕事というのは、AIでは測れない、人間の繊細な感覚による部分がものすごく大きくて。
だから無くならないと思いますよ。衰退はするかもしれないけど(笑)。」

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