Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2018.3.5

Report: モニターツアー 視点採集「平成筑豊鉄道」編 10/15

【9】A.Tさん 女性(PENTAX Q7 /digital)

〈A.Tさんの視点〉

初めて視点採集に参加しました。
テーマは「跡地」です。何かストーリーが感じられるものやエピソードがありそうなものを撮っていきました。

視点採集「平成筑豊鉄道」編

一緒に参加したK.Iくんが生まれた八木産婦人科の前で写真を撮りました。
もうすでに閉院となっていましたが、K.Iくん誕生の跡地です。

視点採集「平成筑豊鉄道」編

駅前の信号機に取り付けられた、二輪車用押ボタン。
きっとこれは、原付の人が困った「跡地」だろうと思って。
原付は停止線で停まっても信号に反応してもらえず、なかなか信号が変わらないことがあるので、
これがあったら便利だなと思いました。

視点採集「平成筑豊鉄道」編

猫がご飯を食べた「跡地」。
今回、猫には1匹も会えなくて残念だったのですが、猫がいるんだなと感じさせる場面に出会えました。

視点採集「平成筑豊鉄道」編

田川にも人がたくさん住んでいることがわかる「跡地」です。
駅前にいた時間が朝早かったからか、あまり人に会えなかったのですが、
駅の横の高架のところに多くの自転車が停められていて、
「あ、めっちゃ人住んでるんじゃん」という発見があったので撮りました。

視点採集「平成筑豊鉄道」編

大きな山があった「跡地」。削られてしまった香春岳の一ノ岳を撮った一枚です。

視点採集「平成筑豊鉄道」編

これは青空の「跡地」。今日、本当は晴れてくれたら良かったなぁ…と。
背景が青空だったら、この赤い竪坑櫓も映えて、コントラストがあって、
もっと綺麗だったんじゃないかという気持ちで撮りました。

視点採集「平成筑豊鉄道」編

炭坑の跡地…って、そのままなのですが(笑)。
炭坑でいろんな人が働いていたであろう場所が記念公園になっていました。
今日はイベントが開催されていて子ども達がたくさんいて、遊んでいる姿が良かったので、一緒に入れて撮りました。

視点採集「平成筑豊鉄道」編

喫煙者の優しさの「跡地」。
駅の近くに喫煙スペースがあったのですが、たくさんライターが置いてあって、
他の人が使えるようにと残されていったものかなと。

視点採集「平成筑豊鉄道」編

油須原駅で、何かが栗を食べた「跡地」です。

視点採集「平成筑豊鉄道」編

誰かがみかんを食べた「跡地」。
ここに「みかん とるな」という看板がかけてあって、みかんが木になっていたけれど、
たぶん、みかんを採って食べる誰かがいたんだろうなと思って、面白いなと思って撮りました。

〈A.Tさんの感想〉

今回は初めてテーマに沿って写真を撮るという経験をして、
初めは何をテーマにしたらいいのか、、ととても悩んだのですが、
町中で目にとまったものを採集していくうちに、
人や生き物や風景の跡を感じたので、テーマは『跡地』に落ち着きました。
皆さんの発表を聞いて、町や様々な物への知識があると深く風景を捉える事が出来るのだなと感じ、
そんな視点があったのか!と発見が沢山ありました。
同じ町を歩いていたのに、それぞれ見ている風景が違っていて、とても面白かったです!
今回はテーマを何にするかに頭を悩ませましたが、
それをどの様に撮ったらより伝えられるのか、という事まで考えて写真を撮れる様になりたいです。
今年は沢山写真を撮りたいです!ありがとうございました!

〈石川の講評〉

Tさんの視点は「跡地」。何かの痕跡や気配を写したような写真ですね。
この10枚の写真から、なぜか「安心感のようなあたたかみ」を感じます。なぜでしょう?
今までそこに人がいた気配が感じられるからでしょうか。(猫や山もありますが)
「無」ではなく、何かとの繋がりがそこに存在している気がして、
それが「安心感=あたたかさ」を醸し出しているのではないかと思います。
いつか見たコラム記事に、誰もいないようなところで人に会うと、
思わず「おーい」と手を振ってしまうと書いてありました。
人は誰でも、ひとりではさびしい。誰かと繋がりあっていたいのだと。
確かにそういう気持ちでこれらの写真を見ると、窓際のライターにも、人の気持ちを感じます。

1枚目の写真は僕の息子です(笑)。
今はもう廃院している「八木産婦人科」の前で、27年前そこで生まれた息子の写真。
なんとも感慨深い写真です。僕にとって、時の経過をこれほど感じさせる写真はありません。
写真のすごさをあらためて感じる1枚でした。Tさん、ありがとう。