中村 紀世志さん(フォトグラファー)
camera: Nikon D750 / New Mamiya 6
今回は私的な撮影ということで、仕事モードに入らないよう、あえて「波佐見らしくない」ところを撮ろうと考えました。
フィルムカメラでは「波佐見っぽくないけれど、波佐見での写真」というテーマで撮影。
そして、露出計代わりに使ったデジカメでは、今日一日の断片を、縦位置の写真で撮りました。
2枚1組で見せることをイメージしていたので、2枚を組み合わせて1つの横写真にしています。断片と断片をくっつけることで、時間の流れを感じたり、より想像が膨らむのではないかと思ってます。
テーマは「クリエイティブツアーに参加したオレ」。
(1枚目)朝、この風景を見て感動し、「今日は良いことが起こりそう」と思ったオレ。
(2枚目)明るくなったり暗くなったり光が変化していたのですが、たまたま自分がこの場所に立った時、光が差し込んで神々しい感じになっていました。そこそこ重たい器を積み上げている、このバランスもすごいと思いますし、さらに窯に入れる時には移動させなければならないわけで、その神々しいまでのバランスに立ち会ったオレ。
被写体は「モノ」ですが、写っているのは「オレ」です(笑)。
(3枚目)いろんな種類のデザインのものがある中で、特にこの青色の輪が描かれているのが好きだなぁと思っていたら、朝日に照らされて、ちょうど良い感じに影がストライプに伸びて、これを気に入ったオレ。
(4枚目)中尾山の街を支えてきたであろうせせらぎの音に癒されるオレ。
(5枚目)大量のご飯に感動しました。食べきれるのか、オレ。
(6枚目)おもてなしをしてくれたお母さんたちとオレ。これだけはちょっと仕事の気分が入ってしまって、「上の看板の文字を入れた方が」とか、「ポストの赤を入れた方が、洋服の赤とのバランスが取れて良いかな」とか、余計な雑念が浮かんでしまいました。
(7枚目)波佐見に来た証拠写真を撮るオレ。
(8枚目)早起きして参加してよかったなと月を眺めながら余韻に浸るオレ。
〜以下は後日送っていただいたフィルムカメラ撮影分(New Mamiya 6)〜
ただそこにあるだけなのに、時間の流れを感じたり存在する意味を問いたくなるような、そんな想像力を掻き立てられるものを撮影しました。
↑実は小さくK.Nさんが写っています。
~石川の講評~
こちらもベテランのカメラマンさん。
もう僕がコメントする必要などないくらいの良い写真です。
テーマは「クリエイティブツアーに参加したオレ」ということで、あえて自己中的な視点で切り取った写真ですが、それがまた一貫性を醸し出していて良い感じです。
写真と共に語られるコメントも楽しくて、ずっと聞いていたい、見ていたいと思う発表でした。
縦のフレーミングの2枚組という見せ方も、斬新で存在感が際立っています。
後日送っていただいたフィルムで撮られた正方形の写真も素敵でした。
~他の参加者からの感想~
・縦位置で撮るのか横位置で撮るのか、というところを考えたというところから、さすがだなと思いました。あえてプロの仕事の枠を外した「俺シリーズ」がとても楽しかったです。導入部分から、だんだんと波佐見の魅力に取り憑かれていく様子が感じられました。
・あえて波佐見っぽくないところを撮ったと仰っていましたが、それなのに、そこに波佐見の良さと感動している撮影者の気持ちとが写り込んでいて、見ていて面白かったです。
・僕も仕事でいろいろな町を巡って、さまざまなものを見ていますが、あまりにもプロの写真家の方の観察力がすごすぎて、底が知れないなと率直に感動しました。
6枚目の写真は、見たら瞬時に「仕事モード」で撮っているのが分かりました。あ、ちゃんと看板入れてる!って(笑)。きっちり決めてきているなと。常に仕事を忘れない姿勢は僕も見習おうと思います。
・「俺シリーズ」は面白くて、もっと見たいなと思いました。
・被写体を通して垣間見える「オレ」を探りながら見てしまうという面白さがありました。今後、中村さんの仕事の作品を見た時も、思わず「オレ」を探してしまいそうです(笑)。
・全部、縦位置で撮られていて、スマホで見ることが主流になった近未来では、もしかしたら、縦位置が普通になるのかもしれないなと思いました。
(波佐見空き工房バンク・福田さん)光と影、奥行きのある構図がとても綺麗だと感じました。シンとした感じだったり、笑い声が聞こえそうな感じだったり、そのときの音も聞こえそうな写真です。