Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

Read

editF_d

2020.2.12

Report: Creative tour 波佐見 〜写真教室編〜(参加者の発表) 6/9

山下舞さん(編集者・フォトグラファー)

camera: FUJIFILM X100F

初めて波佐見を訪れたのですが、今日ぐるっと回らせていただいて、歴史の深さにびっくりしました。私が見たものの中から、歴史順に並べてみました。

(1枚目)“世界の窯のうつりかわり(野焼きから、薪、石炭、ガス、電気釜まで)”
やきもの公園にあった陶版画です。これ自体がすごく平面構成的に美しい上に、世界の中で焼き物の窯が移り変わっていく様子を一覧できることがすごいと思いました。

(2枚目)“約3000年前から使用されてきた「龍窯様式」”
窯に薪をくべる穴が何個かあって、そこから入る光がとても美しくて撮りました。古い窯の中を見ることができる貴重な体験でした。

(3枚目)“7世紀中頃に建立された中尾山の巨大な「登窯跡」”
中尾山にある、1644年に建立されたとされる中尾上登窯跡(なかおうわのぼりかまあと)です。長さ160mという世界最大級の窯がつくられた当時のことに思いを馳せながら撮りました。

(4枚目)“明治期から焼きもの卸商家が栄えた「中尾山地区」”
明治時代、この辺に焼き物の卸商家などが建てられたということで、れんが造りの煙突も見えていて、民家もあって、焼き物のまちとして、ここで経済が生まれ、発展してきたんだなと感じた一枚です。

(5枚目)“分業制で製作される「現代の波佐見焼」”
中善さんでは、工場で大量生産ができるようになったという、すごく象徴的な光景を見せていただきました。すごい数のレンゲを持っているおじさんの画を、現代を代表する姿として選びました。

(6枚目)“産業として発達した中でも重要な存在である「職人」”
たくさんの絵筆と、その奥に絵付けをしているおじさんの手をぼかして入れました。
お聞きしたところ、これらの筆は全て使い分けているのだそうです。波佐見焼の特徴である、分業による大量生産は、そういう職人さんの技が担っているんだなと思い、時系列に並べた中の最後のまとめとしました。

~石川の講評~

以前から知っている編集者の舞ちゃん。カメラマンでもある彼女は写真の腕も抜群です。
構図の水平垂直がビシッと合っているのはもちろん、シャッターチャンスも見逃さない完璧な写真です。
編集者らしく、物語の一枚のような「背景」が感じられる写真ですね。
撮影をしている様子も見ていましたが、しっかり取材をしながら撮っていました。
レポート書いてもらおうかな(笑)。

~他の参加者からの感想~

・私は歴史にあまり注目していなかったので、まるで一冊の雑誌のように編集された6枚で波佐見の歴史を知ることができて、ありがたいです。

・ずっとメモをされながら巡っていたので、何を書かれているのかなぁとすごく気になっていました。こういう視点で過ごした今日一日が、この6枚にぎゅっとまとまっているんだなと思いました。

・6枚目の写真、このアングルで撮るのは勇気がいっただろうなと。
最初から歴史に着目して撮ろうと思われていたんですか?
(山下さん)全然決めていなくて、でも、街並みの写真を撮るのは苦手なので、どうにかヒントを拾いながら撮ろうと思っていました。いろんなところに歴史を解説した案内板があったので、それを参考にしながら。

・中尾上登窯跡は、私も撮ろうと思ったのですが、どういう構図が良いか決めかねて、結局撮れませんでした。れんがの側面に綺麗に光が当たっていて、光と影が美しいなと思います。

・説明を聞いて思ったのですが、編集者の視点というか、文字と組み合わさって完成する余白があるなぁと思いました。もちろん写真からも伝わってくるのですが、なぜ撮ったかという理由がはっきりすることで、より分かりやすくなるなと思いました。

・山下さんは以前から知っているのですが、見ていて、自然にシャッターを押している感じがしました。歴史を教えてもらったり人と話をしたりということが、楽に撮れるカメラがあるからじゃないかなと思いました。写真も素敵ですが、すごく良い道具を見つけたんだなって。

・5枚目の職人さんの笑顔がすごく素敵ですね。

・長い歴史を、今日一日という時間の中で撮ろうとしたところがすごいですし、それを前々から計画していたわけではなく、ここに来て歴史を感じたからという、その瞬発力と編集力が素晴らしいなと思います。

(波佐見空き工房バンク・福田さん)4枚目。中心に電柱があり、その奥に古い煙突が2本。写真を撮るときに「電柱、邪魔だな」と思うことが多いのですが、この写真では、歴史と今の暮らしが混ざり合っている中尾山の暮らしがよく表現できていると感じます。