Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2020.2.12

Report: Creative tour 波佐見 〜写真教室編〜(参加者の発表) 3/9

TETRA+GRAPH 雨宮康子さん(フォトグラファー)

camera: Canon EOS 5D Mark IV

(1枚目)波佐見ではなく、福岡を出てすぐのところで、海が綺麗だったのでバスの車内から撮りました。今日はすごく久しぶりに早起きをして、とても気持ちの良い時間を皆さんとスタートできたという記念のワンショット。ここから旅をスタートするという、イントロダクションです。

(2枚目)私は “同じものがたくさん並んでいるフェチ” で、見ると撮らずにはいられないんです。今回も、中善さんの工場に入った瞬間に「わ、ここはやばい」と思って(笑)。こればかり撮ってしまいそうだったので気をつけました。この一枚は、光もすごく綺麗だったので選びました。

(3枚目)レンゲがたくさん並んでいて、大好き魂がキュンキュンしてしまいました(笑)。
同じアングルで何回か試し撮りをした内の1枚で、おじさんがちょうど手を向こうに差し伸べたタイミングで撮りました。手前をぼかし、際立たせたいものにピントを合わせるという、よく使う手法です。
レンゲをレンゲではないように写したいなと思ったのと、おじさんが一生懸命に説明してくださった後、作業に戻った瞬間の、いつも通りの仕事の手の動きを撮ろうとしたワンショット。

(4枚目)窯の近くの、ジュラルミンみたいな大きな扉の奥にあったパーツを撮った1枚です。「パーツ」フェチでもあり、しかも並んじゃっているので、やばいなと(笑)。どうしても我慢ができなくて撮ってしまいました。

(5枚目)朝、旧波佐見町立中央小学校講堂兼公会堂に寄った時に、向かいにある西の原で撮ったものです。光の加減で、古民家がギラギラした感じに見えたので、それをうまく撮れないかなと思ってシャッターを切りました。
この辺は古い建物が残されていて、新しい役割のものに作り変えられたものもあれば、こうやって昔のまま残されているものもあるというところに惹かれて撮りました。

(6枚目)中尾山での散策の時、集合場所の近くにあったお店のおじさんです。お店の窓から焼き物が並べられているのが見えたので、「あれは売り物ですか?」とちょっと声をかけたところ、たくさん話をしてくださって。
奥には古いものがいっぱい置いてありました。陶芸の館の2階に展示してあったような古いお酒の瓶や、広告の入った火鉢や、昔の鬼瓦などが、調味料や食材と一緒に並べられていたのですが、それらは売っているわけではないそうです。自分の家に埋もれていたものをお店の商品と一緒に並べることで、元気に仕事ができるように、これは自分への応援のつもりで置いていると仰っていました。最後にこの写真を撮らせていただいたら、おやつまで下さいました。

~石川の講評~

さすがプロのカメラマンさんですね。言うことないです(笑)。
逆光気味で撮られた陰影の描写が素晴らしく、一枚一枚がドラマチックで、被写体がはっきりと浮かび上がっていますね。さすがです!
一番好きなのは、やはりおじさんの写真です。
コメントを聞いた上でこの写真を改めて見ると、わざわざお店から表に出ていただいた関係性が写されているようで面白いです。

~他の参加者からの感想~

・1枚目の写真からは、同じものがたくさん並んでいる景色がどんなに好きかっていうことが伝わってきます。
全部を通して、やっぱりプロは光を操るんだなっていうことをすごく感じました。
特に4枚目の建物の写真は、私が同じ場所で撮っても絶対に写せないくらい、曇天な感じがすごく出ていて、すごいなと思いました。カラーじゃなくて、モノクロで撮ったみたい。燻し銀というか。どうしたらこんな風に撮れるんでしょうか?
(雨宮さん)絞り気味に撮りました。ちょうど曇って、まだ太陽の光が差していなかったので、このような感じに。

・お仕事では人を撮ることが多いと思うのですが、今回、人を写しているのが1枚しかないのはなぜですか?
(雨宮さん)全部を物にしようか迷ったのですが、この旅では、あのお父さんとの会話が一番印象に残っていて、これは入れたいと。面白い話を色々としてくださったので。

・同じ場所に行ったはずなのに、4枚目の写真のパーツには気づきませんでした。そういうものを見つける眼がすごいなと思いました。

・改めて自分の撮った写真を見返しても、やはり並んでいるものをたくさん撮っていました(笑)。最初、並んでいるものに圧倒されて、シャッターを押す手が止まらなかったのですが、これはいけないと頭を切り替えて、そこから立て直すのに3分くらいかかったので、この「並んでいるものに没入する」という気持ちはすごくよく分かります(笑)。
どれもとても綺麗な光で、中でも特に4枚目の写真が好きです。限られた時間の中で、自分が心惹かれるものをスパッと見つけ出してきて、さらに良い光で撮れるって、本当に素晴らしいなと思いました。

・私も「並んでいるもの」が好きなのですが(笑)、自分が撮っても、こういう風にはならない。静かな、音のない感じの写真が好きなので、とても素敵だなと思いました。

・補正もしていない撮って出しなのに、構図もピシャッと決まっていて、さすがプロだなと。2・3枚目の写真は、生地から「今から焼かれるぞ」という気合が感じられるようです。

・ショートストーリーというか、今日一日のドキュメンタリーを見ているかのようで、淡々としているのですが、ワクワクしながら撮ったんじゃないかなということが伝わります。明るい写真もあれば、アンダーな写真もあり、よく光を見ながら撮っているんだろうなと、被写体に向かう姿も想像できました。

・引きの写真と寄った写真、曇天のクールな写真と、おじさんの温かい写真など、波佐見のいろんな表情が写し取られているなと引き込まれました。1枚目の「今から波佐見へ行くよ!」というイントロ感も含めて、セレクトもさすがだなと思いました。

・講評なんて恐れ多く、ただただ「素晴らしい!うまい!」と。構図も光も着眼点も、真似したいなと素直に思いました。

・大量の生地の集合写真が、まるでアート作品のように美しくて、この“同じものがたくさん並んでいるフェチ” シリーズをもっと他にも見てみたいと思いました。

(波佐見空き工房バンク・福田さん)3枚目と4枚目。どこにピントを当て、どこをぼかすかで、撮影者の心が動いた箇所がどこなのかよく分かる写真だと思います。
6枚目に写っているのは馬場さんという、とてもユニークなおじさんです。あそこで商売をしていてもお金にならないけれど、店を閉めてしまうと、足のないお年寄りの方たちが生活に困るからと、半分ボランティアのような感じで継続されています。写真を見たらとても喜ぶと思います。