Issue 2023.12

Issue 2023.12

デザイン塾で制作する、テーマ自由のオリジナル冊子。受講生4名の学びの成果をご紹介。

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2012.11.20

kurume kasuri textile ①

ワークウエア+ファッション
久留米絣/HIHAKU誕生。

 「飛白」それは久留米絣の創始者、井上伝が初めて作った絣柄だと言われています。その読み方は「ひはく」そして「かすり」。久留米絣の原点であるその名をとり、エフ・ディプロダクツは久留米絣を用いたプロダクトブランドを発表します。

ファッションデザイナーとつくるワークスタイル

 その堅牢さから、野良着として農家の人々に長く愛用されてきた久留米絣。そんな、日本古来のワークウェアを現代の解釈で洋服に仕立てたのは、福岡市でオートクチュールドレスを制作する「モード美輪」デザイナーの山下籌皓さん。博多織を用いたウエディングドレスの制作も行なっており、反物の扱いにも精通しています。その経験値と、ドレス、洋服制作へのこだわり、生地の魅力を引き出す力に引き寄せられ、私たちは山下さんにHIHAKUのデザイン、パターン制作をお願いしました。
「“ワークウェア+ファッション”ということで、現代のニーズに合うワークスタイルをテーマに制作しました。なりふりかまわず仕事をする時代は終わり、今はおしゃれに働く時代。機能性とファッション性が両立していないといけません。その点久留米絣は高級感がありながらも、その風合いはカジュアルで人の体に馴染む生地です。現代のワークウェアとして最適な生地だと言えるでしょう」。
 また、洋服は形の良さだけでなく、身にまとって初めて真価がとわれるもの。立体裁断にこだわって作られた山下さんのパターンは、体を包み込むように設計されているので動作の際に圧迫感がありません。加えて洗濯に強く洗うほどに風合いが増す久留米絣のタフさは、ワークウェアとしての機能性を高める役目を果たしています。

プロが見つめた、テキスタイルの魅力

 「絣には肌に優しい、乾いた優しさのようなものがありますね。日本ならではの色味も魅力のひとつだと言えるでしょう」。
 私たちはプロダクト制作を行なう前に、山下さんとともに工房を訪れました。素材の生まれる現場を見て、つくり手は何を感じたのでしょうか。
「非常に手の込んだ工程を、ごく当たり前に行う人々の姿には驚かされました。地元の素材は文化であり、重要な資源です。その想いをもって、よりいっそう大切にデザインをさせていただきました」。
 身近な場所で作られたものを身にまとうことは、私たちに全感覚的な心地良さを与えます。エフ・ディプロダクツはこれからも、馴染み深い風土が生む、ものづくりの可能性を見つめていこうと思います。

山下さん独自の考え抜かれたパターンが美しいシルエットをつくる。

博多織のウエディングドレス。オーダーメイドで個々の女性の体型や雰囲気を最大限に生かす。

過去にも絣を素材として洋服を制作し、日本デザイナーズクラブ主催のコンテストにて商工会議所会頭賞を受賞している。

緻密な形算に基づくスケッチ。ここから形が出来上がっていく。

縫製は信頼できる職人の手で。綿は扱いやすい素材だからこそ、より丁寧に針を進めていく。

kurume kasuri textile「HIHAKU」コートワンピース7号(参考商品)
古来から魔除けの効果があるとして、赤ちゃんの産着などにも用いられてきた麻の葉文様。全体に施された麻の葉がグラフィカルで、赤×黒の組み合わせが素朴な久留米絣をモダンに見せています。絣ならではの微妙なかすれが全体に落ち着きを与え、フォーマルにも最適な1枚。

kurume kasuri textile「HIHAKU」久留米絣キモノ(参考商品)
紫がかった濃紺に、雪のように舞うドット。かすれたドットは淡く溶けてしまいそうな粉雪のよう。異なる濃淡と不均一な配列が生地に奥行きと動きを見せます。シンプルなので帯や小物の組み合わせでさまざまなコーディネートが楽しめます。

kurume kasuri textile「HIHAKU」コートワンピース7号(参考商品)伝統的な古代柄をゴシック調にデザイン。濃紺と白のコントラストがインパクト大。計算された襟ぐりが胸元を美しく見せ、きゅっと締まったウエストのラインで上品さをプラス。

風をまとうように久留米絣を羽織る。シルエットが自慢のワークスタイル。

 職人が手間ひまかけて織り上げたテキスタイルと、熟練のデザイナーによる美しいシルエット。久留米絣本来のカジュアルさを大切にしながら、動きやすさと上品さを兼ね備えたラインナップです。シンプルな色柄なのでインナーやカラータイツ、ストールなどでアクセントをつけるとがらりと印象が変わり、コーディネートが存分に楽しめます。普段着はもちろん、生地に高級感があるのでフォーマルな場所にも最適。熟練の職人たちの手で作られたものを身にまとうとき、全感覚的な心地良さがあなたを包むことでしょう。

不揃いな大きさのブロックが並ぶ、カジュアルなテキスタイルのワンピース。経絣ならではのすっきりとした柄が印象的。生地がしっかりとしているので、1枚で着てもコートのように羽織っても良し。

麻の葉文様のトップスはふんわりとした袖と裾のシルエットが印象的。短めの丈なのでパンツでもスカートでもバランスがとりやすい。パンツは膝下をすっきり見せる半端丈で、サイドを絞ることで丈の調整も可能。

付けたまま外へ出かけたくなるサロペットエプロン。ゆったりしたデザインです。

写真=石川博己 文=柳田奈穂