柳川市・みやま市・大牟田市・南関町・荒尾市・長洲町の6市町について、「生業のある風景」という視点でご紹介する冊子を以前、制作させていただきました。

・冊子『生業のある風景。』B6判・32ページ(http://f-d.cc/archives/1519

たとえ華やかな観光地や唯一無二の絶景などが無くとも、そこには自らの生業に向き合い、喜びも哀しみも織り交ぜながら、日々の営みをひたむきに積み重ねている人たちがいます。
そうした風景に改めて眼差しを向けた時、ありふれてみえるものの中に、大切な何かがあるのではないかと気付かされました。

そこでモニターツアーを開催し、このまちを「生業のある風景」というテーマで実際に見て、聞き、食べ、歩いた時、どのように感じられるのか、参加者の皆さんにご意見を伺うことに。
2016年12月9日(金)、第1回目のツアーとして熊本県の荒尾市と長洲町を訪れました。

Report モニターツアー「生業のある風景」荒尾・長洲編

まず最初に向かったのは、荒尾市の小岱山。この地で30年以上、ミカン畑を営んできた安永さんにお話を伺います。

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ここから季節ごとに変わる景色を見つめてきた安永さん。
早朝、山から眺めていると、気流が停滞しているところなどが分かるそうです。
地形を読み、自然の移り変わりを見極めてきた経験から紡ぎ出されるお話は、どれも興味深いものばかり。
話題はミカン作りに適した土地のことから、住宅を構えるならばどのような場所が良いのか?といった内容にまで広がりました。

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「皮の厚いミカンは“スマイルカット”にすると良いよ」と言いながら、実際に切って試食させてくださいます。
瑞々しくジューシーで、その甘さの爽やかなこと!美味しくて、ついつい手が伸びます。

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大きいミカンはあまり人気がないため、値段も安いのだとか。「そういうミカンはね…」と、半分にカットしたミカンを豪快に絞って、混じり気なしの100%ミカンジュースにする安永さん。

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その大胆な作り方に驚いたものの、綺麗なオレンジ色で、とっても美味しそう!
「こうやって食べ方を伝えるのも大事なこと」だと仰っていました。

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さらに目を引いたのは、まるでフグの薄造りのようにスライスして美しく並べられた柿。
また、1週間でできる「たくわん」の作り方や、柚子の意外な使い方なども教えてくださいました。

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色んな人と出会う中で、様々なことを教えてもらったり、学んだり、それをまた人へ伝えたり。そういう出会いと楽しみがなければ、きつい仕事で、なかなか後継者も育たない中、農家は続けられないよと安永さんは語ります。
そして、ここの澄んだ空気と美しい風景があるからこそ、頑張れるのだと。
これからもっと寒くなると、雲仙岳の霧氷がキラキラ輝く様子まで、肉眼で見えるのだそうです。

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「皆さんに美味しい果物を食べてほしい」という思いで、味の向上から食べ方に至るまで、研究と努力を惜しまない姿にとても感動しました。
まだまだお話を伺いたかったのですが、時間切れに。最後にお土産まで頂いて、次の目的地へと向かいます。

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続いて、ミカン畑から程近い場所にある、ふもと窯へ。
2003年に国の伝統的工芸品に指定された小代焼の窯元の一つです。

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立派な登り窯を前に、焚き上げ方や薪のこと、粘土のこと、小代焼の特徴など、色々なお話を伺いました。

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温度計を使わず、ゼーゲルという道具を使って窯の中の温度を確認すること。一度にどの位の薪を使い、その薪はどのように入手するのか。初めて聞くような内容に興味津々、参加者の方からも沢山の質問が飛び出します。

Report モニターツアー「生業のある風景」荒尾・長洲編

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ここで実際につくられた小代焼の作品や、昔の古小代の器なども見せていただきました。
素敵な作品の数々に囲まれて「この器だったら、どんなお料理を盛りつけようかしら」と、楽しい想像も膨らみます。

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次の見学地は、九州荒尾オリーブ村。理事の上園さんが園内を案内してくださいました。

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2010年に荒尾市でオリーブが栽培されるようになり、現在では約2トンの実を収穫しているのだとか。
荒尾市はトスカーナの気候風土とよく似ていて、オリーブの栽培に向いていたそうです。

Report モニターツアー「生業のある風景」荒尾・長洲編

ここにはトスカーナから持ってきたオリーブの苗木が15,000本ほども植えられています。
理想的な樹形にする方法、ゾウムシとの戦い、自家受粉しにくいので2種類以上の品種を植えないといけないこと、実がなりはじめるのは6年目からで、しっかりと実がつくようになるには10年もかかること…等々。
上園さんのお話から、様々な苦労と工夫を重ねながら、一歩一歩、着実に前へ進んでいる様子がうかがえました。

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園内にあるショップ「風の丘」で、まだ生産量も少ない、ここで作られた貴重なオリーブオイルや新漬け、オリーブ茶などを試食させてくださいました。
今年収穫したオリーブをそのまま絞った、まさに“オリーブジュース”とも言うべき高品質なオリーブオイル。そのフレッシュな本物の味を堪能し、お土産も購入して、オリーブ村を後にしました。

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荒尾市での最後の目的地、本田観光梨園へ。こちらで昼食も頂きます。

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鴨梨(ヤーリー)という中国原産の梨の木の前で、本田さんからお話を伺いました。
この鴨梨の樹齢はなんと100年!荒尾梨の歴史が始まったのと同じ頃に植えられたものだとか。
日本梨は60年以内に枯れてしまうので、樹齢100年もの梨の樹があるのは、おそらく九州ではここだけではないかと。

荒尾ジャンボ梨(新高梨)といえば、その大きさが有名で、1つの実が2キロ近くになるものも。
しかし、それだけ立派なものを作るためには、やはり代々継承してきた技術が必要なのだと仰っていました。

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冬の間は何もしていないと誤解されがちですが、12月からは剪定という作業が待っていて、上に伸びている枝を、春までに全部切ってしまわなければなりません。
1本の木で約300もの枝があり、それを一つひとつノコで落としていくので、1日の作業で、せいぜい4〜5本。すべてを終えるのに3ヵ月はかかります。
4月になると花粉付け。めしべに1本でも花粉がつかなかったら丸い梨はできないため、10日間で花粉を2回つけてまわり、その花粉さえも自分たちで作っているそうです。
実がなれば袋をかけ、草を取り…と、することは山ほど。
「美味しかろうと美味しくなかろうと、どの梨にも1年という時間がかかっているのです」と本田さん。
しかも、大きな台風などが来て、せっかくの実が落ちてパーになってしまうことも…。
自然という人間がコントロールできないものを相手にする仕事の大変さをまざまざと感じました。

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「寒いので、まずは温かい飲み物をどうぞ」と出してくださったのは、高級な荒尾梨100%のストレートジュース。しかも、ホットで!温かい梨ジュースなんて初めて飲みましたが、これがすごく美味しくてビックリしました。
手作りのため30本ほどしか作れず、すぐに売り切れてしまうそうです。

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続いて、梨・オイル・酢・塩コショウで作った特製の梨ドレッシングで頂くサラダ。
10分もすれば変色してしまうため保存がきかないドレッシングは、その場でミキサーにかけて作った出来立てのもの。新鮮なお野菜とよく合います。
「もしも買った梨の糖度が低かったら、スライスしてサラダに入れるのも良いですよ」とのこと。

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メインは梨カレーです。梨の果肉に果汁、ジャムも入った優しい甘さのカレーは、小学生のお子さんでもペロリと完食するのだとか。

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そして、もっとも衝撃を受けたのが、このデザート!!

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大きな梨をくりぬいて作った器に、冷たい梨のジェラートと温かい梨の果肉。さらにその上にバターを乗せてフタをして、しばし待つとバターがとろけて…。お好みでシナモンをふりかけて頂くと、その美味しさと言ったらもう!
今回、特別に作ってくださったデザートで、いつでも食べられるわけではないそうです。
ごちそうさまでした!

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ラ・フランスのような形をした鴨梨の実をお土産に頂きました。
「“長寿の梨”を食べて長生きして、最終的には荒尾に移住してきてね」という本田さんの言葉に見送られながら、長洲町へと移動します。

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まずは金魚の館で、金魚マイスターの尾上さんから、長洲金魚について教えて頂きました。

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その後は、中島養魚場へ。この道70年、91歳になる大ベテランの中島さんにお話を伺います。

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特に目を奪われたのが、ピンポンパールという金魚。ピンポン球のようにまん丸で愛くるしい姿はインパクト大です。
なかなか育てるのが難しく、こんなに大きなものは滅多に見ることができないそう。中島さんの熟練の技によるものなのでしょう。

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うまく育てれば、金魚は30年、そして鯉は100年も生きるのだとか。
金魚を育てる上で一番注意しなければならないことは餌のやり過ぎで、夕方から夜にかけては餌をあげてはいけないと教わりました。

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ゆらゆら泳ぐ美しい金魚はいつまで見ていても飽きることがありません。

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いよいよ最後の見学地、ミニトマト農家の元村さんのところへ。

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温かいハウスの中に入ると、水玉模様のように赤色とキミドリ色のミニトマトがずらりと。その様子が可愛らしくて、シャッターを切る音が響きます。
味見をさせて頂いたのですが、採れたて新鮮なミニトマトって、こんなに美味しいんですね!

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農家の方から直にお話を聞くことで、今まで知らなかった農業の実情も知ることができました。
ミニトマトの品種は世界中に300種類ほどもあること。
枝のどこに付いている、どんな粒のミニトマトがより美味しいのか。
受粉させるために1匹500円もするオランダの蜂を購入していること。
ミニトマトは温度管理が難しく、最近の気象の変化に対応するのも大変なこと…。
これだけ手間ひまがかかっているのに「割れたら商品として1円のお金にもならない」という言葉に、日頃、何気なく手にしている品物は、まさに生産者の方々の努力と苦労が結実したものなのだということを改めて実感。
当たり前に思って、つい忘れがちな感謝の念を新たにしました。

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最後に金魚の館へ戻り、参加者の方々との意見交換会。貴重なご意見を頂戴しました。
今回のツアーで出会った人たちに、また会いに行きたいと口々に仰っていた皆さん。
自らの生業に誇りを持ち、仕事を通して培ってきた知恵や工夫を生き生きと語られる姿は、本当に魅力的でした。
生業のある「風景」を生み出しているのは、やっぱり「人」なんですよね。
参加者の皆さんにも楽しんでいただけたようで良かったです。ご参加いただき、ありがとうございました!

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今回は、行く先々で猫に出会ったツアーでもありました。
オリーブ村の、とても人懐っこい看板猫のオリーブにゃん。梨園の接客担当の猫ちゃんたち。
長洲町では猫を見かけなかったなぁと思いきや、金魚の館で行われていたイベントが「招き猫inながす」とは…。

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お話を聞かせてくださった生産者の皆さん。
荒尾市でガイドを務めてくださった「荒尾のまち案内人」の馬場さん。
長洲町をご案内くださった磯野さん、福田さん。
その他、ご協力くださった皆さん、本当にありがとうございました。

Posted by:f-d